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□ビルス様
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「お前、死ぬのか」

真っ白な病室で、紫色の体をした破壊神が問いかけた。少し笑みを浮かべて、私は答えた。

「…ええ、そうです。…死ぬんです」

私の答えにつまらなそうな顔をして破壊神はベッドのそばに寄った。その足音1つに幸福感が湧き上がるのは、やはりこの世とお別れしてしまうからだろうか。

「なぜ死ぬんだ?」

ぴたりと足を止め、再び問いかけてきた。なぜ、というのは、きっと私がもうすぐ死ぬようには見えないからだろう。肌の色も、見た目の体の状態も、健康な時とほぼ変わらない。

「なぜ…ですか。私もよくわからないんです。…強いていうなら、運命かな…」

「運命?」

原因不明の病。感染したわけでも、他の病気と併発したわけでも
ないこの病は突如として襲いかかった。歩けば激痛が身体を走り、生活することもままならない。病は私の命を知らないうちに食い尽くしていたのだ。

「ボクを残して死ぬことが、運命だって?笑わせないでくれよ。…破壊しちゃうぞ」

そう言って、私の顔の上に手をかざす。

「ビルス様に殺されるならいいですよ。この病で死ぬくらいだったら…ビルス様に殺された方が幸せですもの」

本心。だけどきっとビルス様は殺してはくれないのだろう。殺されたい、と言った時、手が少し動いたのを彼は気づいていただろうか?

「…私、死にたくないです。だって、ブルマさんたちにお世話になったのに、なにも返せなかった…。悟天くんやトランクスくんと、遊ぶ約束だってしてた…それに…」

ビルス様をお慕い申してました…。心の中で、そっと呟いた。

「…死ぬことの怖さなんか、気づきたくなかったなぁ…」

涙がつぅ…と頬を流れた。
最期のときまで、この手に繋がれた温もりが消えませんように。



お題/エソラゴト 様より

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