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□ブルック
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バイオリンの音色。夜風に吹かれて届く。私のもとへ。その唄にあわせて声をのせた。踊る、踊る。くるくる廻り。月を前にした貴方は、臆することなく弦を震わせる。指で弾いて、弾いた音が少し、遅れて辺りに触れて帰る。

「今日は、眠れないのですか」

バイオリンを黙らせて、まだ月に背を向けることなく語りかける、彼。

「…私は、なんでいるんだろうって」

思ったの。そう言わないで、私は彼も見ているであろう月をみた。

「黙ってるだけで、何もできない。見た目がいいわけでもない」

そんな私が、嫌いで、嫌いで、しょうがなかった。悲しかった。寂しかった。自分を好きだと思えない、自分が可愛そうで、そしてそう思ってる自分に酔ってる。

「今日は、もう皆さんお休みになられているでしょう」

だから。


甲板にいる、彼のもとへ、近づいて。その骨ばかりの暖かい腕に抱きしめて欲しくて。


そのままで居て良いって、言って欲しかった。



カンツォーネ・ディ・コンフォート

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