An opinion about consultant detective
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経済発展めまぐるしく、産業革命とやらが起こったイギリス。なかでもロンドンは行き交う人の量が違う。この街は忙しい。そんな街に私は住んでいる。住んでいるのはパディントン駅の近く。月に一度だけ、ベイカー街まで出ていく。
ベイカーには私の幼馴染みである、シャーロック・ホームズが住んでいる。大学も同じで、学部は違うもののよく一緒に図書館に行っていた。時々、彼のいる研究室まで行ったりもしていた。
彼はその頃から頭角を表していた。今は諮問探偵をやっている。それがなかなか評判で入れ替わり立ち替わり依頼人が彼の元を訪れる。
こう聞くと彼はとても出来る人間のように思えるかもしれないがそれは間違い。確かに頭はいいけれど自分の興味のないことは何も知らない。それに生活面もものすごく不安定。だから私は月に一度、彼の元を幼馴染みとして訪れる。
「シャーロック。」
「やぁ、これは嬉しいお客だ。さ、入って。お茶でも入れよう。」
恭しく迎え入れられた部屋はタバコの煙でむせ返っていた。思わず咳き込む。
「アイル?どうした?」
「ごほっ、どうしたって、煙っ....全くひどいわ。」
私は通りに面している、シャーロックのお気に入りの窓を開けて新しい空気を取り込んだ。外の空気も悪いけどこの部屋のよりはましだと思う。
「これは失敬。さ、これで機嫌を直してくれるかな?」
「....お砂糖多めに入れてくれたら許します。」
「仰せのままに。」
わざと舞台俳優のような動きをしてみせてから私の元にお茶を持ってくる。
「....何日寝ていないの?何日食べてないの?」
「....そうだね....数えるのも億劫になるくらいかな。」
「本当?!体壊すわよ?」
私は持ってきていた食材をすぐにキッチンへ運び、準備を始めた。後ろからは声が掛かる。
「せっかく入れたお茶が冷める!」
「でも貴方、何も食べていないのでしょう?その方が重大よ!」
「しかし....。」
「...じゃあさっきの分だけ飲んでからにするわ。悔しいけど貴方のお茶は美味しいんですもの。」
私は切ろうとしていた人参を置いて、部屋に戻った。いつの間にか窓は閉じられていたけれど空気は入れ替わったみたい。
「アイルに褒めてもらえるなんて光栄だね。」
「私でよければいつでも褒めるわ。」
他人....と言うには少し違うけれど、ワトソン先生から言わせると私達は少し特殊らしい。幼馴染みと言うだけあって、私の物心つく頃の記憶の中には既にシャーロックがいる。昔はよく2人でパズルで遊んでいた。それくらい私達は一緒に過ごした。過ごしすぎたのかもしれない。
「ワトソンはまだ帰ってこないのか?」
「私に聞かれても困るわ。ワトソン先生は病院なんでしょう?患者さんがいる限り、彼の仕事は終わらないわ。」
私はそう言った勢いで立ち上がり、キッチンへ向かう。2人の話を聞く限り、ハドソン夫人はお料理のレパートリーが少ないらしい。だから私が来た時は少し趣向を凝らしたお料理をしてから帰る。
甘さ控えめにアレンジしたウェルシュケーキにスコーン。今日のメインのシェパーズパイ。パンは買ってきたものですませてしまおう。
「いやぁ...アイルは料理がうまい。是非ハドソン夫人に教えてやってくれ。」
「あの人、私にカレーの作り方を教えてくれたのよ?」
そう言うと言いようのない顔をして、部屋に戻った。彼女は教わるより教えたい人みたいなのよね...。
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