My little gray cells
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僕らのもとにすがりついてきた今回の依頼人はレストレードだった。さっきからホームズや僕に必死に頭を下げている。けれどホームズもワトソンでさえもカンカンに怒っていた。
「頼むホームズ、サティー!この通りだ!僕を助けてくれっ」
「レストレード、ちょっと虫が良すぎないか?」
「そんなこというなよ....」
レストレードが今にも泣き出しそうな声で頼み込む。僕はあまり怒ってなかったけどホームズやワトソンのことを思うとちょっと腹が立つ。
「一体誰のせいで僕らは!」
「あ、あれはしょうがなかったんだ!だって、君らが立ち入り禁止区域に入るのを見たって人物がいたんだよ。」
「だからって!何もロイロットに言いつける事はないだろ!!」
その言葉にホームズはさらに声を荒らげてレストレードに抗議する。ワトソンも今回は珍しくホームズと同意見らしく同調する。
「ホームズやワトソンの言う通りさ。人間はあそこまで怒ることが出来るんだね、というくらいだったんだから。僕がいたからまだ良かったものの....。レストレード、君はあの現場にいなかったからそんなことが言えるんだ。」
僕はあの悲惨な生徒指導室を思い起こしながらレストレードに言った。
「俺は生活委員だよ?それが仕事なんだよ。分かってくれ。」
レストレードも半ばヤケになったように言い返してきた。ホームズはレストレードを見ずに呟いた。
「友達だと思っていたのに、残念だよ。」
「残念だよ。」
「残念だよ。」
ホームズに続いてワトソンも真似をしたように言ったので僕も続けて言った。そして3人でそっぽを向き続けた。
「だ、大体!なんで君らはあんな危ない沼なんかに行ったんだ。」
レストレードは少し苛立ったように言った。
「それは依頼人との秘密だ。答えられない。」
「う....。教えてくれよサティー。」
「僕もホームズと同じだよ、レストレード。依頼人との約束は守るべきなんだよ。」
ソファーに座っている僕の足元にすがりついてきたレストレードを不審に思われない程度によけた。
「アレクシアに近付くんじゃない。ワトソン、帰ってもらえ。」
ホームズは僕の上着を引っ張って自分に寄せてワトソンに顎で指示を出した。
「ホームズはお怒りのようだ。今日は帰ってくれ。」
キッパリと言い切った物腰は普段のワトソンではなかった。怒ってるんだね。そう言われたレストレードは諦めてため息をついた。
「....分かったよ。」
その言い方が何だか切なくて僕はホームズの手を気にせずにレストレードの制服の裾を掴んだ。案の定、進み出していたレストレードはコケてしまった。....悪いことしたかな?そう思いつつも隣のホームズを見て説得するように笑うとホームズも軽く息を吐いた。
「一応、話だけなら聞いてやってもいい。」
その言葉がよっぽど嬉しかったのかレストレードは地面からすごい勢いで起き上がって振り返った。
「助かるよホームズ!!」
僕はレストレードに今回だけだよ、との意味を込めてウィンクを飛ばした。
「ありがとうアレクシア!」
そう言って手を取られた。僕の体が硬直しているのをホームズが見て、レストレードの手を払ってくれた。
「感謝する前に早く事件の詳細を教えてくれ。」
「あぁ。実は....俺はとんでもない事に巻き込まれてしまったんだ....!」
ホームズの目を真剣に見つめてレストレードが言った。が、ホームズはそんなことはどうでもいい、といった顔をしていた。
「....一体何があったの?」
ワトソンがそう尋ねたおかげでレストレードはやっと内容を話始めてくれた。