My little gray cells 番外編

□Fleurs de cerisier.
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「ワカバはニホン?の人なんだよね?よかったら僕にそのニホンのことを教えてくれないかい?」

「え?あ、構いませんよ。」

にこりと笑って僕を見てくれた。うん、可愛らしいね。僕もこれくらい可憐だったら世界は変わったのかもしれないね。昔の、あのことも無かったかもしれない。

「...サティーくん?」

「あっ、ごめん。すこしほうけてたみたいだよ。今日は気持ちいい天気だからね。ピクニックでもしたら気持ちいいだろうねぇ。」

僕は窓の外を眺めながらそう言った。ワカバもつられて外を見ていた。

「日本のことだと、何が知りたいですか?」

ワカバは窓から僕に視線を動かして聞いてきた。

「そうだね....その綺麗な髪はニホン特有なのかい?」

僕が手を伸ばして髪に触れると体をびくつかせた。驚かせてしまったのかな?

「あぁ、ごめんよ。驚いてしまったかい?」

「はい、ちょっと。こんなにスキンシップが激しいのには慣れてないので...。

髪は、そうですね。日本人ならだいたいの人がこんな感じの髪ですよ。」

「申し訳ないね。

そうなんだ。ニホン、素敵な国だね。僕も行ってみたい。」

常に笑顔を絶やさないワカバ。とても話しやすくてどんどん話しかけてしまう。彼女自身はあまり喋らないのかな?

「ニホンってイギリスと同じ島国なんだよね?やっぱり似ているのかい?」

「いいえ、全然違いますよ!車はないし、機関車もないし....」

僕はそれからもどんどんでるニホンの情報に唖然とした。

「それって....人が住めるのかい?未開拓地も同然じゃないかい!ニホン人ってすごいね....僕は絶対に住めない。」

なんでお茶が緑になるんだろう。緑のお茶だなんて見たことがないから飲んでみたい。でも緑のお茶の国には悪いけれど住めないかな。紅茶がないと僕は生きていけないからね。

「サティーくんはイギリス人なんですか?」

ワカバがすこし遠慮がちながらもはっきりと尋ねてきた。僕らにとって東洋人がみんな同じに見えるのと一緒で、ワカバたちにも僕らがみんなおんなじに見えるんだろうね。よく見ると違うんだけどなぁ。

「ううん。僕はフランス人さ。1年半前くらいにここに転校してきたんだ。」

「フランス人!フランスってお洒落なイメージがありますから羨ましいです。サティーくんもどこか気品のある、お洒落な雰囲気をまとってるからフランス人だと言われて納得です。」

どうやらワカバはフランスが好きみたいだ。いや好きというより興味がある、に近いかな。僕は故郷を褒められて嬉しかった。

「フランスは素敵な国だよ。パリは...ちょっと汚いけれど、食事とパンなら任せておいて。」

「パリって汚いんですか!?」

「まぁ、ね。慣れたらどうってことはないと思うよ。ただ、第三者として見るとすこし、汚いかな。」

苦笑いで僕は続けた。認めたくないけれど事実だから仕方ない。

「そうなんですね。まぁ、日本も同じような感じですよ。やっぱりどの国にも良いところ悪いところ、ありますよね。」

「完璧なんて人間の世にはないからね。」

僕らはそう言って笑いあった。しばらくの沈黙が訪れる。帰るタイミングを見失ってしまったよ。どうしようかと考えていたら何処からともなく、ハミングが聞こえてきた。音のした方を振り向くと、ワカバがいた。

「さっきのハミング....君かい?」

「うそ!?音、出してましたか....?」

恐る恐る、と言ったようにワカバは僕を見た。

「あぁ、バッチリ聞いてしまったよ。とても綺麗な音だった。

是非何か歌ってみてくれないかい?ほとんど人もいない時間だし....頼むよ!」

僕は聞き逃さなかった。ワカバはすごく歌が上手い。ハミングだけでそう思ったのだからきっと普通に歌ったらもっと上手いはずだ。僕自身、歌がうまくないから羨ましい。

「無理ですよっ!」

「どうして?小声でいいからさ。んー....なんならまたハミングでもいいよ。君の歌が聞きたいんだ、ワカバ。」

「サティーくん....。」

僕は真剣に言った。ワカバはすごい才能の持ち主なんだ。僕は聞きたくて仕方ない。音楽好きとしては聞くしかないだろう?
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