My little gray cells 番外編

□Kattenstoet!!
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部屋を出たばかりの頃とはうってかわってこそこそと廊下を歩いていた。そんな中、僕のベルトについた尻尾を引っ張られた。そのせいで僕の体はバランスをくずした。

「うわっ!」

「おっ、と。」

僕はシャーロックに腕を支えられ、コケることは免れた。一体誰なんだ、こんなイタズラをしたのは!そう思って振り返った先にいたのはアドラー先生だった。

「あら、忍び込んだ子猫ちゃんたちだと思ったらサティーにホームズ君じゃない。なぁにこれ?」

アドラー先生は僕らの帽子をつついてみたり、撫でてみたりと思うように触っていた。なんとなく居心地が悪くてシャーロックをみるとアドラー先生が近いからか、照れているような様子だった。それが僕には物凄く、不快だった。その理由はわからない。

「アドラー先生。人の旦那様に手は出しちゃダメなんですよ。」

そういって僕はシャーロックの腕にしがみついた。シャーロックは驚いたのか大きく体をびくつかせた。

「ん?どういうことかしら?」

珍しくアドラー先生も焦ったように僕やシャーロック、ジョンに説明を求めていた。

「今、僕とシャーロックは夫婦なんです。」

「アレクシアっ....!その言い方は語弊を招く....」

「あらら。お似合いねぇ!

ね、ホームズ君?ん?」

アドラー先生はいつものようにシャーロックの綺麗な高い鼻をつん、とつついた。

「...ーーっ」

「シャーロックーー」

僕はアドラー先生にでれでれしているようなシャーロックに僕はむかむかして来たのでいつもの僕からは考えられないくらいシャーロックにむっとした顔を送った。

「あらあら仲睦まじい夫婦ねぇ。お付きも大変ね?」

「お付きの人じゃなくて道化師なんですけど....。」

「ふふっ、なんでもいいじゃない。

じゃあね、可愛い夫婦のお二人さん。」

そう残してアドラー先生は廊下を歩いていった。残された僕たちは部屋に戻ることにした。


部屋に戻ってきてから僕はずっとむっすりしていた。シャーロックは隣でそわそわしている。そのことに気付いているのは僕だけ。

「....。」

「....。」

「いやぁ、意外と面白かったね。猫祭り!」

ジョンはなんの悪気もなくそういったのにシャーロックは冷たく当たった。

「あっそ。」

「あっそ....って。君が一番乗り気だったじゃないか!」

「別に。」

「別にって....。」

ジョンは諦めたのか溜め息をついて帽子を脱いで机においた。僕もそれにつられて脱ごうとしたとき、シャーロックに止められた。

「なんだいシャーロック。」

「....別に。」

そういう割には強い力で僕の帽子を頭に押し付けてきた。僕は脱ぐのを諦めて帽子から手を離した。シャーロックの手は頭に残ったまま。何をされるのかと身構えていると、猫の毛並みを整えるように頭を撫でだした。

「意外とこの帽子、ふかふかなんだね。」

そういいながら僕を猫のように扱いだして、最後は僕の喉元から顎にかけてを撫でてきた。それがくすぐったくて仕方なかった。

「ひゃはっ....シャー、ロックっくすぐったいっ!」

ソファーに寝そべっていた体をごろりとひっくり返した。シャーロックは何が面白いのか笑ってまた同じことをしてきた。僕らはそれを数回繰り返した。いい加減笑いすぎて疲れたよ....。

「....あ、サティー。眠いなら僕のベッド使ってもいいよ?」

僕の眠さを感じ取ったのかジョンがベッドを勧めてくれた。僕はそれに頷いてロフトに上がろうとした。が、1段目で足を引っ掛けてコケてしまった。

「寝ぼけ過ぎ。」

シャーロックがコケた僕を背負ってベッドまで運んでくれた。なんか、人の体温がここまで心地よく感じたのは初めてかも。

「寝るんなら夕飯まで寝てれば?心配しなくても起こすから。」

「んー...シャーロックは?」

「え?」

「ねないの?」

僕は微睡んでいく目と口と頭をフル回転させながらシャーロックに問いかけた。しばらくの間固まっていたけど、すぐに僕の隣に寝転んできた。

「へへへ....シープスー....」

シャーロックが目の前で微笑んだのを確認したところで僕の記憶は途切れた。



「....おやすみ、ミネケ・プス。

僕の、自慢の....人。」

僕はとても小さな声で、アレクシアを抱き締めながら言った。もちろんこれはワトソンには聞こえていないはず。

今日はいきなりアレクシアが猫の格好をしてくるし、それで校内を歩くことになるし散々だったけど、何の違和感もなくアレクシアと僕が夫婦だと公言できたのは、少し嬉しい。それにそれを嫌がらなかったアレクシアにだんだん元の、女としていたころの感情を思い出せてもらっているんだと感じた。そして僕も自身を微睡みの中に放り出した。



「ホームズーサティーー。パイクが来てるんだけど....って、寝てるよ。」

僕が来客を知らせるためにロフトに上がると猫夫婦は幸せそうに2人、同じベッドで寝ていた。い、一応サティーはその...女の子なんだからあんまり一緒に寝るのは....ねぇ?でも2人の顔を見て、2人とも見たことないくらい幸せそうな顔をしていたので何も言えなくなってしまった。....ここだけの話、僕はこの2人、両想いなんだと思ってる。だってホームズはホームズでサティーを特別扱いだし、サティーはホームズといるととても満たされたような顔になる。サティーの心の傷は深いものだ。癒せるのはホームズだけ。

「....しょうがないんだから。」

僕は困ったように一人で笑った。あながちお付きの人って立場は間違ってないかも。

「ん?なんでホームズとサティーは変な帽子を被って2人で寝てるの?」

と言いながらパイクは隣でカメラを構えた。僕の静止も聞かずに1枚撮った。

「それ!!売っちゃダメだよ!?」

「分かってますよー」

とニヤニヤしながらいうパイクを僕は疑いの目で見る。パイクは観念したのか撮った写真を僕に渡してきた。

「分かったよあんたにやる。その代わり次の依頼料は高いよー?じゃあねー。」

それだけのこしてパイクは部屋から出ていった。渡された写真を見て、僕は困った。これをどうしろと?

「ノートに挟んでおこう。」

僕のお気に入りのノート、ワトソンメモと称したビートン校で起こる不思議な事件のまとめが書いてあるノートの一番後ろにその写真を入れた。....将来、これを見て3人で懐かしむ日が来るといいな。ノートを机において、僕もソファーで一眠りすることにした。このとき、僕は2人を起こさなかったことで理不尽に怒られることをまだ知らなかった。
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