My little gray cells 番外編
□Fleurs de cerisier.
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心地よい昼下がり。僕は1人、図書館へ来ていた。僕の相棒であり、かけがえのない友人は採取してきた学園の土の研究に夢中なんだ。もう少しでディーラーとベイカー辺りの土の区別がつくらしい。
「ええっと...歴史は....」
僕は自分の好きな本を探していた。フランス史が好きな僕は歴史の本棚あたりをぶらついていた。歴史、とひとくちに言ってもゴードンの好きなイギリス史や僕の好きなフランス史、ドイツ史も割と好きだったりするんだ。ヨーロッパだけじゃなく、東洋史も人気が高いらしい。僕はあまり読んだことがないジャンルだけれどね。
「ん....たまにはいいかもね。」
もし、を考えるとキリのない歴史だけど先人のやってきたことには学ぶべきことがたくさん詰まっている。だから僕は歴史が好きなんだ。僕は東洋史を探すために隣の本棚を探した。
「中国か、いいね。
ん?J、A、P...Japan?」
手にした中国史の本のとなりにあった本に僕は惹かれた。Japon....ニホン、だったかな。確かものすごく小さな島だっけ。中国史の本を片付けてその本を取った。
「あっ....」
「え?」
僕の少し下から女の子の声が聞こえてきた。視線を下げてみると小柄で華奢で....とにかく繊細そうな黒髪の女の子がいた。
「あー...もしかしてこれが欲しかったのかい?」
僕がそう尋ねると女の子は首を縦に振った。どうしても読みたかったわけではないので彼女に本を渡した。
「ありがとうございます。」
「Pas du tout.」
笑顔でそう言うと女の子は首をかしげて僕を見た。...おっと、フランス語が出ていたようだ。最近、よく出てくるんだ。
「どういたしまして。当然のことをしたまでさ。」
「ありがとうございます。お礼は....」
女の子は眉を下げて困った顔をしている。どうやらお礼を気にしているみたいだ。僕がそんなパイクのように下衆な人間だと思ったのだろうか?それならそれで僕の振る舞いを今一度見直さないとね。
「じゃあ、そうだなぁ....それなら君の名前を教えてくれないかい?」
「そ、そんなことでいいんですか?」
「なんなら学年も教えてもらえるととても嬉しいよ。」
ぱちり、とウインクを飛ばして言ってみた。女の子は目を何度か瞬かせていた。僕の見立てでは....1年生かな?ライトのようなあどけない可愛らしさが所々見える。
「あ、えと...笹森わかばです。学年は、3年です。」
「pardon?君が、3年生だって?」
「私、日本人だから幼く見えるのかもしれません。」
「あぁ....ニホンの人なんだね。だからさっきの本も。」
僕は全部に合点がいったので何度か頷いた。それにしても同じ年だとは思えないくらい幼く見えるね。これが東洋人は若く見えるってやつなのかな。何しろ初めて見るから珍しくて仕方ない。
「あなたは?」
「あ、ごめんね。名乗るのが遅れてしまった。僕はアレクシア・サティーさ。学年は君と同じ。
これも何かの運命だね。よろしく、ワカバ。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。サティーくん。」
僕らは陽のあたる図書館の一角で初めての出会いをはたしたことを祝して、握手を交わした。