Hello, darling!
□第5話:名シーン来たる
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「ロゼの言ってた教主の部屋ってのはこれか?」
「だね!」
「何で分かんだよ」
「第六感!」
ふふふっとニヤケ面を向ける。
あっその白けた顔も好き結婚して。
程なくするとギ…と目の前の扉が自動で開いた。
「へっ「いらっしゃい」だとさ」
中に入ると、扉はまた自動で閉まった。
「神聖なる我が教会へようこそ。教義を受けに来たのかね?ん?」
階段の上からコーネロが現れる。
その顔には薄ら寒い笑顔を貼り付けていた。
「ああ、ぜひ教えてほしいもんだ。せこい錬金術で信者を騙す方法とかね!」
「…さて何のことやら。私の「奇跡の業」を錬金術と一緒にされては困るね。一度見てもらえば分かるが…」
「見せてもらったよ。で、どうにも腑に落ちないのが法則を無視した錬成がどういう訳か成されちゃってるってことなんだよね」
「だから錬金術ではないと…」
「そこで思ったんだけど
"賢者の石"使ってんだろ?」
ぴく、と反応するコーネロ。
「例えばその指輪がそうだったりして?」
更にぴぴく、と反応する。
キモい。
そして追い詰めるエド格好良い!!
私も追い詰められたい!!
って想像したらヤッバ!!
格好良い!!泣く!!アアァァァ
「(なんか悶えてる…)」←アル
「ふ…流石は国家錬金術師。すべてお見通しという訳か。ご名答!伝説の中だけの代物とさえ呼ばれる幻の術法増幅器…我々錬金術師がこれを使えばわずかな代価で莫大な錬成を行える!!」
「…探したぜぇ!!」
「ふん!なんだその物欲しそうな目は!?この石を使って何を望む?金か?栄誉か?」
「あんたこそペテンで教祖におさまって何を望む?金ならその石を使えばいくらでも手に入るだろ」
そーだよね〜法則無視なら金とか生み出し放題な訳だ。
って、そーいや私この世界来てから無一文じゃね。
はははははは。
「金ではないのだよ。いや金は欲しいがそれは黙っていても私の懐に入ってくる…信者の寄付という形でな。
むしろ私のためなら喜んで命も捨てようという柔順な信者こそが必要だ。
素晴らしいぞぉ!!死をも恐れぬ最強の軍団だ!!
準備は着々と進みつつある!見ているがいい!あと数年ののちに私はこの国を切り取りにかかるぞ!!はははははははは」
「いや、そんなことはどーでもいい」
「ていうか話長ーい」
「どうっ!?我が野望を「どーでもいい」だの「話長い」だのの一言で片付けるなぁ!!貴様国側の…軍の人間だろが!!」
「私はエド側の人間でーす!(どや)」
「(無視)いやーぶっちゃけて言うとさ、国とか軍とか知ったこっちゃーないんだよねオレ。
単刀直入に言う!賢者の石をよこしな!そうすれば街の人間にゃあんたのペテンは黙っといてやるよ」
無視されたのは置いとこう。
私思うんだけどさ、もしここでコーネロが大人しくエド達に賢者の石を渡したとしても、この場にロゼさんいるからどっちにしろこいつのペテンはバレるんだよね。
いやぁ抜かりないよねーさすがエド。まじ好き。はぁ。
「はっ!!この私に交換条件とは…貴様のようなよそ者の話など信者どもが信じるものか!奴らはこの私に心酔しておる!忠実な僕だ!貴様がいくら騒ぎ立てても奴らは耳も貸さん!
そうさ!馬鹿信者どもはこの私に騙されきっておるのだからなぁ!!」
ははははははは、と高笑いするコーネロ。
ここまでくるともはやニヤニヤが止まらない。
さーあ!ネタばらしの時間だ!
「いやーさすが教主様!いい話聴かせてもらったわ。確かに信者はオレの言葉にゃ耳も貸さないだろう。けど!
彼女の言葉はどうだろうね」
アルの鎧の中からロゼさんが出てくる。
今度ぜひ私も入れてください。
「!?ロゼ!?いったい何がどういう…」
「教主様!!今仰ったことは本当ですか!?私達を騙していらっしゃったのですか!?奇跡の業は…神の力は私の願いを叶えてはくれないのですか!?
あの人を蘇らせてはくれないのですか!?」
ロゼさんは目に涙を浮かべる。
きっと今、彼女の中で真実が見え隠れしてるんだろう。
本当は分かってたんだ。
「死者を生き返らせることはできない」なんていう、当たり前のこと。
「ふ…確かに神の代理人というのは嘘だ…だがなぁ、この石があれば今まで数多の錬金術師が挑み失敗してきた生体の錬成も…おまえの恋人を蘇らせることも可能かもしれんぞ!!」
「ロゼ聞いちゃダメだ!」
「ロゼいい子だからこちらにおいで」
「行ったら戻れなくなるぞ!」
「さぁどうした?おまえは教団側の人間だ」
「ロゼ!」
「お前の願いを叶えられるのは私だけだ、そうだろう?最愛の恋人を思い出せーーーさあ!!」
手をギュッと握って葛藤するロゼさん。
一瞬引きとめようかと思ったけど…やめた。
「ーーーごめんなさい三人とも」
私は何も言わなかった。
いいよ、知ってるから。
間違いを犯しても、貴方はまた自分の足で立ち上がれる。
今よりずっと強くなって。
「それでも私にはこれしか…これにすがるしかないのよ」
「いい子だ…本当に…」
嘘つけ「馬鹿な女だ」って顔してるくせに。
ロゼさんを手中に収めた今、あとは私達の口封じをしてしまえば今までのペテンがバレることはなくなる。
コーネロは壁のレバーを下げた。
「さて、では我が教団の将来を脅かす異教徒は速やかに粛清するとしよう」
私達の背後から現れたのは、ライオンと…トカゲ?の合成獣、キメラ。
今まで見たことのない生き物に思わず「うっわあ」と声を上げた。
「この賢者の石というのは全く大した代物でな、こういう物も作れるのだよ。キメラを見るのは初めてかね?ん?」
ぐぉるるるるる、と唸り声をあげるキメラ。
やべぇ近い近い近い近いって。
原作知識あるとはいえ素でビビってエドの服を握る。
エルリック兄弟は余裕の表情だ。
アル「ヒュー」じゃないよ楽しそうにしてんなよ。
「おい、下がってろ」
「え、あ…うん」
エドに言われて服を離す。
もうなんか、話しかけられるだけで昇天できる気がしてならないよ。
「ーーーこりゃあ丸腰でじゃれ合うにはちとキツそうだな、と」
エドはパンッと両手を合わせて、その手を床につけた。
ーーーゴウッ
ひゅっ、と喉が鳴った。
初めて見る、エドの錬金術。
青白い光が走って、その手から槍が生み出される。
ドキドキと胸が高鳴る。
ああ、本当にーーー貴方なんだね。
「うぬ!錬成陣も無しに敷石から武器を錬成するとは…国家錬金術師の名は伊達ではないということか!だが甘い!!」
錬成した槍をバキン、とキメラの爪に切断される。
そしてその爪はエドの左足にも至り、ズボンに切れ跡を作った。
「ぐ…」
「うはははは!どうだ!鉄をも切断する爪の味は!?」
「エドワード!!」
一瞬エドの顔が痛みに歪むが、その表情はすぐに引っ込んだ。
「…なんちって!」
キメラの爪がベキン、と割れる。
その隙にエドはキメラの腹に強烈な蹴りをお見舞いした。
ズボンの切れ跡の隙間から、金属質が光ったのが見えた。
「あいにくと特別製でね」
「………ッ!?どうした!爪が立たぬなら噛み殺せ!」
「グゥオオオオオッ」
今度はエドの右腕に噛み付く。
ーーーでも。
「ウ…!?ガフッ…ウウウ」
「どうしたネコ野郎。しっかり味わえよ」
あ、そのセリフ私も言われたい。
噛み切るはずだったものが噛み切れずに戸惑うキメラの顎に、またもエドの蹴りが入る。
牙が砕け、キメラは泡を吹いて失神した。
「ロゼ、よく見ておけ。
これが人体錬成を…
神様とやらの領域を侵した咎人の姿だ!!」
エドは牙で破かれた服を脱ぎ捨てる。
露わになる、罪の証ーーーオートメイル。
「鋼の義肢"機械鎧"…
ああそうか…鋼の錬金術師!!」
「降りてこいよド三流。格の違いってやつを見せてやる!!」
「(かっ…こい…)」
口元を手で押さえる。
もはや声も出なかった。
ただただ、激しい動悸が止まらないでいた。