怪人ヒーロー

□第3話:うどん屋バイト
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『昨晩、ヒーロー兼タレントの"イケメン仮面"アマイマスク氏がA市の路地で倒れているところが発見されました。アマイマスク氏の証言によると、レジ袋を被った…』





「いらっしゃいませー!」

テレビの音量に負けないくらい声を張る。
ここはZ市に位置するうどん屋「たびびと」。
私は日々ここでバイトをさせてもらっている。
さすがにお金ないと生きてけないからね!

「ねえちゃん肉うどん一つね」
「かしこまりました!」

伝票に「肉1」と書き殴る。
私はそれを調理場の店長に渡した。

「店長」
「………」
「店長!」
「………ふぁっ?」
「「ふぁっ?」じゃなくて注文入りました。肉1です」

それまでボ〜〜〜っとしてた店長は私の言葉を聞いてカッと目を光らせた。

「ぶrrrrrrるあああああ!!!あーーーざああーーーす!!!!!!」

さっきまでの雰囲気はどこへやら、店長は雄叫びをあげて素早い動きでうどんを作り始めた。
うーーーん、何度見ても凄いなこの変貌ぶり。
お客さんはもう慣れてるのか平然としてるけど。





ちなみに特に住み込みで働いてる訳ではなく、ちゃんと別に家はある。
まぁ家というかぶっちゃけ勝手に住んでるだけなんだけど、私は今Z市の無人街に住んでいる。
無人街というだけあって家賃も何もいらないから文無しには嬉しい物件だ。
そもそもその地域が無人街になってる理由というのが、怪人多発のため危険指定区域になってるかららしい。
別にそれを知ってて住みついた訳じゃなくて、この世界に来た当初適当に彷徨ってたらそこに行き着いたってだけなんだよね。
だからそこが危険指定区域だったって知ったのも、この店で働き始めてからだし。
私からしちゃ全く危険地域じゃないんだけどね。
怪人とか出くわしてもぶん殴って終わりだからさ。





「肉うどんお待ちい!!!」

ドンッと器がカウンターに出される。
私はそれをお客さんのところまで持った行った。

「お待たせしました!肉うどんですね」
「お。ありがとー」
「ごゆっくりどうぞー」

くるっと向き直ると既に店長は調理場の椅子に座ってボーッとしていた。
変わり身はやっ。





ところで、私はバイトと買い物以外の時間はほとんどレジ袋を被って怪人をやっている。
て言っても手ェ出してんのはヒーローだけだけどね。
本当はこんな面倒くさいことしなくても、「気」を探って強そうな奴を探し出すのが一番手っ取り早いのだ。
もちろん私だって最初はそうした。
しかしそれらしい気を感じないのだ。
そりゃあそこそこ強そうな気はいくつか感じるが、とても私より強い相手だとは思えない。





恐らく私の探すXマンは、無意識にしろそうでないにしろ、普段は気を押さえて生活しているのではないだろうか。
それか、自分が強すぎて本気を出せる相手がいないとか。
………うわ何それ鳥肌。





「ごちそうさんでーす」
「あっ、はい!ありがとうございます!」

慌ててレジでお金を受け取る。
いかんいかんボーッとしてた。
私も店長状態だった。





まぁとにかく、あれだな。





ーーーXマン。





…絶対に見つけ出してやる!!





あ、力んで小銭潰した。

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