怪人ヒーロー

□第2話:怪人始めました
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さて、早いもので私がこの土地に舞い降りてから約一ヶ月が過ぎた。
いやーまさか文字通り舞空術で舞い降りることになるとはね。
何せ気がついたら空の上。
何か雑じゃね神龍。





それはそうと、文明が微妙に違うのでここが異世界だというのはすぐに気がついた。
最初こそ「え、これ元の世界に戻れんの!?」とか「やべ、親に何も言わずに来ちゃったよ」とか焦ったものの、最終的には「まぁいいや」に落ち着いた。
我ながら感性の緩さも親譲り。





ところでこの世界にはヒーローというのがいるらしい。
何でも怪人やら何やらで色々物騒なので治安維持のためだとか。
それにしてもヒーローっておま、そんなん強いに決まってんじゃん!
もしかしてXマンもヒーローなんじゃね?
あ、"Xマン"って例の「私より強い男」のこと勝手にそう呼んでるだけなんだけど。
てか絶対そうだろXマンはヒーローの中にいる!
そう勝手に確信した私はさっそく炙り出し作戦を開始した。










ーーー路地

「くっ…おのれ…"イケメン仮面"アマイマスク…」
「わざわざフルネームで紹介ありがとう。B級賞金首ごときが一人で僕に襲ってくるとは感心しないけどね」

ピッピッピッ

「もしもし。ああ僕だけど。雑魚を片付けといたから回収に来てよ。場所は…」





「こーんばーんわ」





私は電話中の彼の後ろに静かに姿を現した。

「………何者だい?(気配がしなかった)」
「お兄さん、ヒーローの人でしょ?ちょっとお手合わせ願おうかなーと思ってね」
「フ…僕を知らないのか?彼のように知って挑んでくるのもなかなかだけど、君も負けてないね」
「え、本当?どうもありがとう」
「収録帰りで疲れてるんだ。早々に消えてもらうよ」

彼はそう言うと同時に、一気に距離をつめてきた。





それから決着がついたのは一瞬。





『もしもし?アマイマスクさん?もしもし…』
「ふーーーん、こんなもんか」

電話のお兄さんはドサッと倒れた。
残されたもう一人の男が驚きの眼差しで私を見る。

「あ…アンタ何者だ…」
「ん、私?」





夜空の雲が晴れる。





「諸事情で怪人をやってる者でーす」





頭にレジ袋を被った私の姿が月明かりに照らされた。

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