BOOK

□シロップ漬け
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ガブリ。
一口噛み付くとシロップの甘い味と桃の香りが広がった。


「お前桃缶好きだよな」


横で頬杖付いてぼーっと僕の食べる姿を眺めるしうちゃん。


「好きじゃ悪いわけ?」


ムシャムシャと桃にかぶりつく俺が可笑しいのか、呆れたように笑う。


「俺にも頂戴」


あ、と口を開け、桃が口に入るのを待つしうちゃんの口にまるごと一個桃を入れる。そしたら、「んっ…」と目を閉じて小さな口に入りきらない桃を一生懸命食べるしうちゃん。

ああー、シロップが垂れちゃってるよ。

口端から溢れるシロップがとてもいやらしい。思わず、生唾をゴクリと飲んでしまった。


「お前入れすぎだよ」


困ったように眉をひそめるしうちゃんに、ティッシュで口元を拭ってあげる。『おじいちゃんみたい』とクスリと笑うと『るっせえ』とバツ悪そうに自らティッシュを取り口元を拭った。




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