□標的1 チェルベッロ来る!
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見事な葉をつけた大きな銀杏の木がヴァリアーの広大な庭一面を艶やかな錦色に染め上げた。

二階のバルコニーの手摺りに腰を掛けたスクアーロはぼんやりと舞落ちる黄金色の葉を眺めていた。

心を落ち着けようと外へ出てみたがこれは失敗であった。秋特有の物寂しい雰囲気がより一層スクアーロの焦燥感を煽ったのだ。

リング争奪戦から3ヶ月、スクアーロの怪我もほぼ完治しすぐにでも任務へ出て一暴れしたいところであったが、それも叶わぬものであった。もしかすれば一生叶わぬとも言いきれない。

ゆりかごにリング戦、二度のクーデターの失敗によりヴァリアーの処分は厳格な審議のもと取り決められる。その決定が公表されるのが今日だ。

現実的に考えてヴァリアーの存続は絶望的、命を持って償えともあの沢田家光なら言い出すかもしれない、死ねと言われて死ぬタマではないが。

なかなか来ない本部の人間に苛立ちを隠しきれず指で無意識に手摺を小刻みに叩いていた。

日は既に西の山に沈んでいて、空は不気味なほどの燃えるような赤で染め上げられている。途切れ途切れの黒い雲が足早に上空を流れていく。


明日は雨だろうか。
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