ちいさなゆめ

□眠れないあなたと夜中のコーヒー
1ページ/1ページ




夜中の調査兵団本部は暗く冷たく、灯篭の灯りがかろうじて灯っているだけであった。こんな怖い思いをしながらナナシはトレンチにコーヒーカップ、ポットを乗せて歩いていた。
仕事で眠れない彼の為にコーヒーを淹れてあげようという優しさであった。
本人がまだ起きているだろう彼の執務室の扉の前まで来てノックをすると、入れ。と低い声で返事をされた。


「こんばんは、リヴァイ。」
「! ナナシ。」


リヴァイと呼ばれた男は彼女の顔を見るとすぐさま側に駆け寄り部屋へ招き入れた。
兵士長を務めるリヴァイは執務の仕事に追われており、眠れない時間…もとい、寝られない時間を過ごしていた。そんな彼の為にコーヒーのソーサーを机の上に置くとカップにコーヒーを淹れてあげた。


「おい、ナナシ。こんな真夜中に来て、変な奴に会ったらどうすんだ。襲われたりでもしたら…」
「あのね、ここは調査兵団本部なんだから大概知り合いでしょ。それに襲われたりしませんよ。」
「まぁ、お前を襲ったりしたら俺が殺す。」
「おー、こわ。」


冗談を掛け合いながらナナシはリヴァイの話を聞きながらくすくすと笑っていた。
正直リヴァイにはもう少しナナシには危機感を持って欲しいのだ。彼女は兵士だがそれ以前に女だ。
基本的には男の方が力が強く、欲深い。
ナナシをじっと見つめていると、どうしたの?と言わんばかりに小首を傾げてリヴァイの肩に自分の頭を預けた。


「ナナシのこと、いつでも心配だ。」
「あら、なんで?」
「もし他の糞男に襲われたりしたら気が狂いそうだ。」
「ふふ、大丈夫。」
「お前な、少しは警戒心というものを持て。」


能天気なナナシを見つめながら溜め息をつき、コーヒーを啜った。
彼女が淹れるコーヒーはリヴァイは好きだ。豆の節約と言って少し味は薄めだがその中でも香りがよく引き立っており、温度も適温なのだ。
いや、リヴァイはナナシが淹れるのに限らず彼女の声、顔、性格、匂い、全てが大好きである。
人と言うものは恋人が出来たらよくこう話すものだ。
相手のどこが好きなの?″かと。リヴァイにとっては分かり切った下らない質問にしか聞こえないのだ。


「ナナシ。」
「ん?なあに?」
「愛してる。」


そう言うとナナシは驚いたように目を見開くと視線を逸らすかのようにそっぽを向ける。


「聞こえなかったのか?」
「き、聞こえたよ。どうしたの?リヴァイじゃないみたい……」


そうだ、まるで自分ではないみたいに普段言わないワードをサラッと告げてしまう。
なんでだろうか、今夜はそういう気分だった。普段言わない言葉にナナシはドキドキしているのか目を明らかに泳がせていた。
そんな姿がとても愛おしくてリヴァイはナナシの肩を抱き寄せた。


「あの……リヴァイ。仕事はいいの?」
「束の間の休憩だ。」
「ふふ…なんだか、甘えん坊さんみたい。」
「うるせぇなぁ。少しは口を閉じておけ。」


そう言うと、はいはいと笑いが混じった返事が返ってきた。
このまま彼女を押し倒しても悪くはないが、なんだか今日はこのままでいたい気分だ。そんな事を考えていると突如睡魔が襲ってきた。肩を抱いていた手を離し、するすると自分の頭をナナシの膝の上へ乗せた。


「リヴァイ…?寝るの?」
「束の間の休憩だ。」
「さっきと同じ応えだね。」
「少し経ったら起こしてくれ。」
「じゃあ、私がこのコーヒーを飲み終わるまでね?」


そう言うと小さな返事が返ってきてしばらくするとリヴァイからは静かな寝息が聞こえてきた。
ナナシはそんなリヴァイの頭を優しく撫でると、もっとと求めてくるように摺り寄せてくるのであった。







fin





................................................




甘えん坊リヴァイさんを
書いてみたかった。
豪快なキャラ崩壊です。







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ