ちいさなゆめ

□あなたと3日間 2日目
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2日目。
なんだかこの人と1日過ごすのに慣れてきた。字も丁寧だしなにしろ几帳面なので仕事を片付けるのが早い。だけどこうも事務仕事していると目が疲れてしまうのだ。
目を押さえながらソファに座り背もたれに体を預けていると目の前に人の気配がした。手を退けてみると、いきなり布のようなものに視界を塞がれた。


「え?!ちょっと、なに?!」
「ただの冷たくしたハンカチだ。目の疲れにはいいだろ。あとほら、紅茶だ。」
「えっ?!そんな!リヴァイ兵長、わたしがやりますのに。」
「紅茶くらい自分で淹れられる。それにお前、昨日もほとんど寝てないだろ、少しは休め。」


そう言うと自分の分の紅茶も淹れ、向かい側のソファにどかっと座ると紅茶をすすっていた。
この人は優しいのか優しくないのか分からない人だ。でもこれは彼にとって優しさなのだろう。冷たい布を目に当てながら目元はひんやりしているのに心はあったかかった。


「少し休憩したら、ナナシに取ってきてほしい資料がある。」
「はい、構いませんが。」
「じゃあこの紙に書いてある。この資料をよろしく頼む。」


と紙を渡してきた。
紅茶とこの布のお礼と言ってはあれだが、資料庫に行くことにした。
しかしリヴァイ兵長が渡してきたメモの資料はなかなか見つからず結構な時間がかかってしまった。


…あ、あった!!


見つけた資料は棚の1番上にあり、高すぎて届かない。ハシゴを持ってきて資料を取ることにした。あまり安定感がないハシゴに少し恐怖を抱きながらも資料に手を伸ばした。手が届き、資料を、安心したようにしっかり胸元に受け止めると不安定だったハシゴが倒れかけた。


「あ……」

「おい!危ねえ!」


後ろから声がしたと思ったら床の固い衝撃ではなく柔らかい感触が体全体に伝わってきた。
そうわたしはリヴァイ兵長の上に倒れこんでいた。頭をちょっと上げるとすぐそこにはリヴァイ兵長の顔があった。すぐに状況を把握し、焦った。そして体をすぐに起こし兵長から離れた。


「り、リヴァイ兵長!大丈夫ですか?!お怪我は?!骨とか追ってないですか?!体は動きますか?!」
「一気に質問してくんな。平気だ。」


エルヴィン団長が帰ってきたらもうすぐに壁外調査に行くのでそのために怪我をしてしまったら大問題なのだ。兵長は体を起こし服についた汚れを手でパンパンとはたいていた。


「お前が遅いから、迎えに来たらこの状況だ。あんな安定感のないハシゴを使っているから。
もしあれが立体起動装置でここが壁外ならお前はとっくに巨人の腹ん中に入ってたぞ。」
「あ…いえ…。わたしは団長の補佐であり書類整理専門なので壁外に行かないので…」


と言うと兵長は舌打ちをしてわたしと服をはたいて汚れを落としてくださった。


「ほら、戻るぞ。悪かったな、危ない目に遭わせて。怪我はないか?」


とサラッとわたしの髪を撫ぜる兵長。その瞳は優しかった。
怪我はないか、と聞くのはわたしのはずなのになぜか言葉が出なくて頷くことしかできなかった。その様子を納得したように手を引っ張り部屋を戻るのを催促されたようだった。


「ナナシを怪我させたら俺がエルヴィンに怒られるからな。」
「それは、お互い様です。」


わたしは苦笑をすると兵長はじっと見つめており少し笑った気がした。その行動に一つ一つになぜだか心がドキドキしていた。いつも見ていたのは会う度に蹴って悪態をついて部下だろーが上司であろうが生意気な口をきくリヴァイ兵長だったから。このギャップは困惑する。


「あの、リヴァイ兵長…ありがとうございます。」
「あぁ。」


握られた手が熱い。
なんだかわたしは恋と似たものを感じてきた。それはないと、首を横に大きく振った。






つづく








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