短夢

□計算外のヤキモチ
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「にほうくふ、はへてくらはい。」


「おーよく伸びる餅じゃのー。」


仁王くんは今私の両頬を横に伸ばしている。

自慢じゃないけど私のほっぺは昔からよく伸びるのだ。


「ぶっ、春崎なんだよい、その顔…ぶふふ。」

「ブンちゃん、面白いじゃろー」


最高だなお前、もちもちじゃーとか意味わかんないこと言って女の子いじめてるこいつら最低。

桜ちゃんは今日は休みだし、テニス部の救世主は今どこにもいないし。

だれも助けてくれない…



「そろそろやめとくかの。」

そういって仁王くんはやっと私の頬から手を離してくれた。


「なー今度は俺にものばさせろよい。」

「やめてください、丸井くん。今度から丸いブタって呼んじゃうよ…いひゃひゃひゃひゃ…」


丸井くんがこっちの迷惑も知らずにそんなこと言うからちょっと言い返しただけなのに。

頬を伸ばすんじゃなくてつねってきた。このやろう。


しばらく丸井くんと仁王くんと言い合っていると



「なにをしているんだ。」

救世主様!といいたいほどのグッドタイミングで現れたのは

「蓮二くん!」


私の彼、蓮二くんだった。

「蓮二くん蓮二くん、この二人最悪で最低なの!
人の頬つねってあそぶんだよ!」

私は蓮二くんの後ろに隠れてそういった瞬間、


丸井くんと仁王くんは凍った。

その理由は…


「れ、れんじくん…?」

いつも一緒にいるテニス部でも、

付き合って一ヶ月たつ私でも滅多に見ない蓮二くんの開眼であった。



「さ、参謀!早まるな!俺たちはただ…、のう?ブンちゃん!」

「は?!なんで俺に振るんだよい!」



「おい、人の頬、それも女子の頬をつねったのになにもいわないのか。」

後ろの私でもわかった。

開眼蓮二くん超怖い。


「すまんかった春崎。」

「わ、わるかったよ。」



「明日プリンといちごオレちょーだい?」

と言いたかったけど、言いたかったけど!

蓮二くんの開眼の恐ろしさに私も飲まれて


「ぜ、全然へーきだよ、うん!」

と言った。



「明日プリンといちごオレが欲しい。というと思ったのだが…?」

相変わらず人の考えを見抜くプロの蓮二くんがそういうんで


「奢る奢る!なあ?仁王!」

「お、おん‥」


と二人は言ってこの場を去っていった。







「あの、蓮二く…」

―ぎゅ――

「え?」


二人が消えてから急に静かになってしまった空気が嫌で蓮二くんの名前を呼んでみたら

抱きしめられた。



「蘭。。どうしてお前は…。」

「蓮二くん?どうしたの??」


30cmある身長差で蓮二くんの顔はよく見えないけど

ちょっと険しい顔のようだ。



「蘭。俺は自分の集めたデータからお前は今頃仁王と丸井にからかわれているのだとわかった。

だからここに駆けつけた。」


そうだったのか、あまりにもグッドタイミングでした、蓮二さん。



「だが、俺がこんなにも嫉妬心を露わにするとは…思わなかったんだ。」

「蓮二くん?蓮二くん、私ね、蓮二くんが来てくれてすっごく嬉しかったの。
今、嫉妬したって言ってくれたのも、

ちょっぴり嬉しかった。

私もね、蓮二くんが女の子と仲良くしてたら嫉妬するよ?

だから、そんなに落ち込まないd…」



―ちゅ――






「ありがとう、蘭。」

「れ、蓮二くんそれは反則っていうんだよ、私喋ってたし… ―ちゅ」


「ふ…、かわいいな、蘭。」

「れ、れ、蓮二くん!!」



二度の不意打ちのキスに真っ赤になっていた私だけど、


よく見たら蓮二くんもちょっと赤くなってて、うれしかった。




計算外だとこんなに落ち込む蓮二くんはかわいくて仕方ない。

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