小話集

□修羅の叙情詩
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Reach your hand








暗闇の中、手を伸ばせと囁かれた。


だけど手は伸ばさない。


代わりにその声が聞こえない様、耳を塞いだ。









風に乗って、楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
たまたまその場を通り掛かった馬超は何事かと声のする方に視線を向けた。

「兄者、そろそろ止めといた方がいいんじゃねぇか〜?これ以上負けがかさむと洒落になんねぇぜ」
「煩ぇ!勝負はこれからだっつの!おい雲長、さっさと賽振れ!」

会話の内容から察するに彼等は賽を振って賭け事をしているらしい。そしてこの国の主が一番負けている様だ。

「お、馬超じゃねぇか!お前も混ざるか?」

その様子を眺めていた馬超に気付いたこの国の主、劉備が走り寄ってきた。

「昼間から賭け事等と、一体何を考えて…ってうわ、酒臭くないかアンタ」
「そりゃ飲んでるからな。当たり前だろ」
「まだ日も高いっていうのに…アンタ君主としての自覚あるのか?」
「おいこら馬超!兄者に向かって何て口の聞き方だ!」

劉備が答えるより早く張飛の怒号が飛んできた。

「ちょっと兄者に気に入られてるからって調子乗んなよ」
「俺はただ正論を言っただけだ。それと君主殿にどう思われていようが俺には関係無い」

にべもなく言い切った馬超はさっさとその場を立ち去った。

「何だあの野郎は!兄者、何だってあんな失礼な若造をここに置いてるんだよ?」
「まあ許してやれって。まだ慣れてないだけなんだろ」
「だからってなあ…」
「いいからいいから。さ、続きやるぞ続き」

二人は待っていた関羽の元へと戻り、そして暫くすると再び笑い声が響き渡った。




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