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□極上の目覚め
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胸だけじゃなく全身何処もかしこも柔らかい骸は、抱き心地抜群で。


「…起きたら、」

「え?」

「起きたら、骸は部屋を出て行くでしょ」

「…恭弥様」

「離れて、行くでしょ…」


骸は雲雀家の使用人であって、僕専属って訳じゃないから。

僕を起こす事は、数ある仕事の中の1つ。

…骸の全部が僕の為にある訳じゃ、ない。


「…クフフ…」

「…なに」

「いえ、…大人びていても、やっぱり未だ中学生なんだなぁと」

「子供扱いしないでよ」

「子供でしょう?こんなに甘えん坊なんですから」


未だに骸を抱き締める僕に応える様に、骸の腕が僕の背に回された。

強くない力で、パジャマを握られる。


「…ねぇ、恭弥様」

「なに」

「この屋敷にはあんなに沢山メイドがいるのに、何故僕が毎日貴方を起こしに来るか、解りますか」

「…仕事だからじゃ、」

「貴方の着替えの世話も、食事の世話も、日替わりでお付きが変わるのに。…なぜこのお役目だけ毎日僕であるのか、考えた事はありませんか?」

「………」


首元に埋められた骸の頭。

跳ねた後頭部の髪が頬に当たって擽ったい。

既に密着しているのに、更にぐりぐりと押し付けるみたいに擦り寄る骸。

どんな顔してるのかは、見えない。


「…嫌、なんですよ」

「嫌?」

「貴方が、他の誰かに、あんな風に、…甘えるのが嫌」

「…むく」

「他の誰かを、あんな瞳で、見つめるのが…嫌」

「骸…」


「あんな風に触れるのが、あんな風にキスするのが…僕じゃない誰かにもなんて、嫌なんですよ」



ふ、と、感じていた重さがなくなる。

預けられた躰は自らの腕を支えにし、僕から距離を取った。

そうして漸く見る事が出来た骸は、微笑ってた。

きれいに、きれいに。


「僕が貴方を起こすのは、仕事だからなんかじゃありません」


朝の陽射しの中で、君はまるで天使みたいに。


「…貴方が一言命じて下されば、僕は…」


…いや、そんな潤んだ瞳で誘う君は、天使なんかじゃないね。

こんな妖艶な天使、聞いた事ないもの。


「…ねぇ」

「はい…」



伸ばした手は、優しい手に包まれて。



「…ねぇ、骸」


















僕の専属になりなよ。















(勿論です、大好きな貴方)













fin.

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