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□ぽん太様より
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日本の気候はイタリアとは大きく異なる。
例えば、風の触れ心地や日射しの強さ…しいて言うなら、空気が全く違うのだ。
湿気が入り交じった不快な暑さ…
骸にとってこんな気候は、日本に来て初めてだった。
今は水無月、いわゆる梅雨の季節。
どんより厚く灰色の雲に覆われて、重くじっとりとした空気。
背中を伝う汗に骸は怪訝な表情で、窓を開けた。
窓を開けても心地よい風は入ってこず、不快感が募るだけ。


「恭弥くん…何なんですか…この暑さ…曇っているのに暑いなんて…どうして、日本はイタリアと違ってじめじめしてるんですか?!」


いつもの落ち着いた口調など微塵もなく、荒々しく言い放つと、骸は応接室のソファーに座る。
黒曜中学の短いスカートや襟元をパサパサと揺らすたびに、白い肌が見え隠れし…
隣に座っていた雲雀は、チラリと骸に視線を向けて書類をおいた。


「……骸」


「何です?!」


「さっきから煩いよ君、それとはしたない行動は慎んでくれる?」


雲雀は冷めた表情で、サラリと言い放つと再び書類に目を通し始める。
制服のシャツのボタンを1つだけ外している雲雀は、汗もかかず涼しげな表情。
そんな雲雀の言い方や態度に、骸の苛々は頂点に達した。


「ッ!恭弥くんは暑くないんですか?!さっきからずいぶん涼しい顔をされてますけど!!」


「そりゃ日本人だからね…耐性ができてるよ」


雲雀の言葉に骸の胸がチクリと傷んだ。
ムゥ…とあからさまに怒りの表情を出して、骸はプィ!とそっぽを向く。


「どうせ…僕は耐性がありませんよ!」


雲雀は生粋の日本人。骸は生まれも育ちもイタリア。
互いの間に、目に見えない大きな壁を嫌でも感じてしまったのだ。


「ねぇ…この部屋クーラーがついているんでしょ?何故つかわないんですか?」


そう、応接室には大きなエアコンが設置されている。
こんな大きなエアコンなら直ぐに、部屋の温度は快適になりそうだが…
雲雀は眉間にシワを寄せて、口をヘの字にすると、きっぱり言い捨てた。


「僕はクーラーみたいな人工的な風が嫌いだよ…自然な風が好きなんだ」


雲雀の発言に骸はしばし、絶句し…融通のきかない、我が儘な彼氏に、遂に怒りの矛先を向けた。
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