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□依雫様より。
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ブランケットを握り締めて居た割に、骸の手はあっさりと持ち上げられた。
音を立てない様に小箱を開く。取り出した指輪をそっと骸の薬指に填めて見れば、サイズは丁度良い様で。
「凄い、ホントにピッタリだ…」
他の指のサイズからでも、ちゃんと予想が立てられるなんて流石プロだよね。そうは思うけれど、別に埋め合わせなんかにする気は無い。この指輪自体が、雲雀の自己満足と独占欲を証する物なのだから。
それでも何となく嬉しく成って、雲雀が握った手に嵌った指輪に唇を寄せると、骸が小さく身動ぎをした。
「ぅん…雲雀君…?」
薄ぼんやりと目を開けた骸が、不思議そうに握られた手を見る。
違和感を感じるのか、少しばかり指を動かして…それから骸の目が大きく見開かれた。
「明日、だと思ってたんだ…僕の誕生日」
「…未だ…今日、ですか?」
「うん、あと2時間くらい」
良かった、と呟いて身を起こした骸の両腕が、雲雀の首に絡みついた。子供が甘える様に、雲雀に頬を擦り寄せて囁かれた、声。
「誕生日、おめでとうございます」
「うん…ありがと…ケーキ、明日一緒に食べよう…一緒に、食べて?」
「……はい」
骸の背中に腕を回して、さらにその体を引き寄せると、雲雀の胸元でシルバーのチェーンがちゃり、と音を立てた。
「指輪…」
「ん?」
「指輪、何でですか?」
少し身を離した骸に、雲雀は照れ臭く成って答えを躊躇する。訝しげな骸に、どう説明した物か。
「雲雀君?」
骸の視線が、雲雀の胸元に見え隠れするチェーンと、自身の指に填められた指輪との間を行き来するのが、目を逸らして居ても分かる。
施しなんか受ける物か、と張り叫ぶ様に生きる骸の事。きっと理由の無いプレゼントなんか受け取らない。
意を決して、雲雀は口を開いた。
「君からのプレゼントの話、…あの店主さんに聞いて」
「ああ…いつものお店のですか」
「うん…それで、僕はこれを、君に持ってて欲しいと、思った」
これを、と言い乍ら、雲雀はもう一度骸の左手を取った。今度は、指を絡める様に。
「…?」
骸は明らかに納得して居無い。当たり前だ、誕生日の当人から、プレゼントを貰うのが自分だなんて。
次の言葉を言うには、雲雀にだって勇気が要る。怒り出しはしないだろうか、馬鹿馬鹿しいと吐き捨てられて仕舞わないだろうか。
「僕から、僕へのプレゼント…君をそれで縛り付ける権利を、僕に頂戴」
緊張しながら告げた言葉に、不安は必要無かったのかも知れない。
指を絡めた侭の骸が雲雀に勢いよく抱き付いて、ぶつかる様なキスをした。
End.
08.5.1
「traumerei」依雫様から頂いてしまいました、雲雀誕生日雲骸小説です!
読んだ瞬間あまりの素敵さにマジ泣きしそうになりました。
切ない擦れ違いですが、ちゃんと収まって良かった…(^^)v
依雫様、有難うございました!