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□舞姫の扇
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「君を泣かせるくらいなら、大切なもの無くした事くらい構いませんよ。…その場合君は怒るでしょうけど、」
「うん、怒るよ」
「怒られても殴られても、いっそ殺されても。…君に泣かれるよりはずっとマシですからね」
思わず、眼前の躰を抱き締めた。
女の子独特の柔らかさが伝わって、どうしようもなく鼓動が早くなる。
愛しい、な。
「引き受けた以上、最善は尽くしますけどね。…演劇部が求めているのは“生徒会長の僕”にしか出来ない役だそうですから、上辺だけ取り繕っていればどうとでもなるでしょう」
耳元に響く声が愛しい。
抱き締め返す腕が愛しい。
触れ合う胸から伝わる僕と同じ速度の鼓動が、愛しくて愛しくて堪らない。
「骸」
「はい」
「僕が先に死んだら、君はどうする?」
「…泣いちゃいますね、絶対」
「だろうね」
決まりだね。
僕達、死ぬ時はお互いがお互いを殺そうよ。
一緒に逝ければ、哀しくないからね。
泣かなくて、良いから。
泣かせなくて、良いから。
「舞台、楽しみにしてる」
「観に来てくれるんですか?」
「勿論だよ。踊り子っていうからには、際どい服とか着るんでしょ。観ない訳ないじゃない」
「……君は何でそうイイ雰囲気を壊すんですか…」
照れ隠しだよ。
君の言葉が嬉しかったなんて、絶対気付かせないからね!
fin.
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