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□たった1つの大切なもの
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「ンっ…ぁ、あぁっ、ぅ、」
「ほら、どうしたの。ちゃんと言わなきゃ解らないよ」
くちゅくちゅという濡れた音が、爽やかな陽光に満ちる部屋に漂う。
未だ陽も高い時間に、1人で使うには広過ぎるベッドで繋がる男女1組。
お互い服を身に付けたまま、必要な箇所だけ肌蹴た状態で。
「きょ…や、様ぁ、」
「ん…?」
「あっ、そこ、…そこぉ!そこ、イ…っ」
「ここ?」
「ひぁあっ!」
元々短いミニスカートを更にたくし上げられ、下着はとうに取り去られているから秘部を隠す物は何も無い。
光に溢れた空間では、夜の様に闇が視界を遮る事も無い。
繋る様子をまじまじと見られ、胸元を惜しげも無く晒すメイド服の少女は、与えられる羞恥と快楽に2色の瞳を潤ませた。
「また泣いちゃって…そんなにイイの」
滲んだ涙を人差し指の甲で拭い、濡れた指をぺろりと舐める。
恭弥様、と呼ばれた少年は、その黒い瞳を愉しそうに細め、震える少女をじっと見つめる。
「答えて、骸」
骸、それが少女の名。
有無を言わせぬ物言いには所有者の力が込められていて、骸は彼の言葉に逆らう事は出来ない。
そう、骸は所有されているのだ。
「恭弥様の、だから、…です。恭弥様だから…イイんですっ」
「ふふ…そう。良く言えたね」
顔を真っ赤にして、潤んだ瞳で、恭弥を真っ直ぐに見つめる骸。
その返答に満足し、恭弥は骸の乱れた髪を梳いてやる。
「君は僕の専属だから。僕の全ては君が握っているし、君の全ては僕のもの」
常に傍にいて、恭弥の全てを知る者、それが骸。
寝食の世話から、夜伽の相手まで、骸以外に委ねる気は無い。
骸だけが、恭弥の全てに触れる事を許されている。
心も、同じ。
「恭弥様…、貴方にお仕え出来るなら、僕はもう何も要りません」
「良い心掛けだね」
「…好き、です…恭弥様」
「僕も、愛してるよ、骸」
火照る頬を掌で包み、唇を重ねた。
既に躰は繋がっているというのに、たかが口付けで更に鼓動が跳ね上がる。
堪らなく愛しいのだ、この腕の中の存在が。
何度躰を繋げても、何度口付けを交わしても、慣れる筈も無ければ飽きるなんて有り得ない。
ただ1人の、大切なひと。
主人であり使用人である、そんなものどうでも良くなるくらいに。
「きょ、ゃ、さまぁっ…ぁっ、あっ、ぁ」
「もっと、…啼きなよ、」
「…っんん、あっん、ふ、ァっ!」
荒々しく揺さぶって、昂る自身をその躰に深く深く埋め込んで、全てを注ぎ込む様に、果てる。
「っ…はぁ…ぁ…ぅ」
「…こども、出来ちゃえば良いのにね」
この躰に、2人から繋がる命が宿ってしまえば良い。
誰に認められようと認められまいと関係は無いけれど、そうすれば、引き裂かれる事などきっと無くなる。
「恭弥様…」
「なに」
「…孕むまで、犯して下さい…?」
自ら脚を開いて、白濁の伝う蜜壷を晒す骸。
快楽と歓喜に満ちたその表情に、煽られない訳は無くて。
「…後で泣いても、やめてあげないよ」
「やめないで…、ずっと、恭弥様と繋がっていたいんです」
未だ陽は高いのに。
万人に認められる関係では無いのに。
君が欲しい、
貴方が欲しい、
濡れた音は止まない。
ふたりが本当に結ばれるまで。
(ねぇ、逃げちゃおうか)
(僕の為に全てを捨てて下さると?)
(勿論、)
(君以外は全てゴミだもの)
fin.
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