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現在の時刻、21時47分。

中学生が外を出歩いて良い時間では決してない。

こんな時間に家に着く、なんて事が、最近は珍しくなかった。


「……眠い…」


今にも閉じようとする瞼を必死に押し上げ、目の前のドアを見つめる。

うん、大丈夫、僕の家。

半分寝惚けた頭で部屋番号を確認し、鍵穴に鍵を差し込む。

聞き慣れたカチリという音で鍵は開き、冷たく冷えたノブを回してドアを開けた。

今の今まで家主の居なかった家。

勿論そこは暗く、外程ではないが寒い。

暖かく明るい家は、其処にはない。


「…いないのか…」


時々、骸が勝手に尋ねて来る事があった。

どうやってか鍵を開けて、電気を付け、暖房を付けて部屋を暖めて僕を待ってた。

今日も遅かったんですねお腹空いたでしょう、とか言いながら、上手くもない料理を作って待ってた。

何度かあったそれを、僕はいつの間にか楽しんでいて。

期待する様になっていて。

僕の家を自分のものみたいに動き回る骸を、もっと見ていたいと思う様になっていて。

…だからこそ、落胆も大きい。


「はー……」


溜め息も出るよ。

やる気も削げるよ。

どうにか保ってた意識も、突き付けられた現実の所為で一気に遠のいたよ。


「…寝よ」


廊下に鞄と学ランを置き去りにしたまま、寝室へと向かう。

寝室の扉を開いても勿論暗くて。

何度目か解らない溜め息を吐いて、ベッドの縁に座った。

あぁ着替えなくちゃ皺になる、そう思うのに、そんな気力はなくて。

最低限と思いベルトだけを外して、掛布団を捲った。


「……………ん?」


暗い視界の中、捲った其処に何かある様な気がして止まる。

良く目を凝らして見ればそれは、人の形をしているもの。

少しずつ暗闇に慣れて来た目でじっと見れば、それが骸である事が解った。


「…ワォ、何してんのこの娘」


骸は動かない。

耳を澄ましてみれば、すぅすぅと小さな寝息が聞き取れた。

寝てるのかい骸。

しかも何だいその姿は。


「…何で下着しか着けてないの…」


布団の中で寝ていた骸は、何故か下着姿だった。

つまりブラとショーツだけ。

今日は水色チェック地のいちご柄かい?

やたら発育してる躰にやたら少女趣味な柄の下着っていう、絶妙なアンバランスが堪らないよね。


「骸」


何を思ってこんな格好で寝てるのか知らないけど、とりあえず据え膳だ。

喰わなきゃ男が廃る。
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