3

□クリスマスフリー
1ページ/3ページ


この時期、世間はクリスマスだ何だと浮かれてる。

此処ジャッポーネの人間なんて大概クリスチャンでも何でもない癖に、イベント事だけは適当に乗るのだから馬鹿らしい。

クリスマスだから何だ。


ツリーを飾る?

何が楽しい。


ケーキを食べる?

何がめでたい。


恋人と過ごす?

プレゼントを贈る、貰う?

…それはそれは、おめでたい事だ。


僕はそんな事しない。


出来ないんじゃない、しない。


自分の意思で、彼の意思で。




別に、羨ましくなんてない。









































12月24日、至る所でクリスマスソングばかりが流れる不愉快な日。

クリスマスイヴだか何だか知らないが、たかが冬の1日に過ぎない日。

只今の時刻21時5分前、あと3時間もすればこの不快な日も終る。


「……寒…」


吐き出した息は冬の空気に白く残り、暫し校門に立てられた灯りに照らされ消える。

見上げた教室には未だ電気が付いてる。

僕の好きな人がいる教室。

彼は今日が何の日だろうと関係なく、いつもの様に風紀の仕事を片付けている。

クリスマスムードに流され校内に持ち込まれたプレゼント類を没収し、お菓子類を焼却炉で焼き払い、女生徒の悲鳴が轟いても何も気にせず。

いつも通りの1日を、過ごしただろう。

それが、彼だから。

彼の風紀を乱せば全ては彼によって壊される。

イベント事なんて、風紀が乱れるだけの、最も彼が嫌うものだから。


「…ぁ、」


21時ジャスト。

応接室の明かりが消え、彼の仕事が終ったのが解った。

もうすぐ彼が来る。

風紀を乱した輩が多数出没したであろう今日この日、彼の機嫌はきっと良くない。

きっとむすっとした顔をして現れる。

僕を見たら、彼はそんな表情を少しは和らげてくれるだろうか。

想像したら頬が緩んでしまう。

可愛い可愛い彼、僕を見て綻んだ頬を直ぐに無理矢理引き締めようとするだろう、素直じゃない彼。

あぁ、早く出て来て。

早く逢いたい。


電気の消された昇降口に、黒いシルエット。

それが校門まで歩いて来たのを確認し、門に預けていた体を離す。


「雲雀くんっ」


校門横の灯りに照らされた彼は、やっぱり不機嫌そうな顔をしていた。

考えていた通りの表情に、つい笑いが洩れる。

直ぐに綻ぶだろう彼の頬を予想して、にやける顔筋を必死に引き締める。

けど。


「…骸、何でいるの」

「ぇ」


彼は僕を見て、眉間の皺をもっと深くした。

機嫌、良く、ならない。

待ってたのに。


「いつからいたの」

「…学校が終って直ぐに」


酷く機嫌が悪そうな彼。

質問に正直に答えても、益々怒っていくだけ。

…何で。


「何で応接室に来なかったの」

「…今日はいつも以上に忙しいでしょうから、仕事の邪魔になるだろうと…」

「気を遣ったつもり?馬鹿じゃないの」


何で。

何で怒るの。

僕は、君の事を思って。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ