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□メカニカルロジック
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カチ、

コチ、


カチ、

コチ、



機械的な音、


機械的な動き、





機械的、な、















































「骸」

例えば、邸内で見掛けたから名を呼んでみる。
名を呼ばれた相手は、それが当たり前の様に振り返る。

「おや、綱吉。今日もまた一段と得体の知れない笑顔ですね」
「はは、お前に言われたくないよ」

返って来るのはちょっとしたからかいの言葉と、笑顔。
あぁ、いつもと同じだ。




例えば、手を伸ばして、その白い手を握ってみる。
体温が低いのか、いつ触ってもこいつの肌は冷たい。

「どうしました、ボス?」
「白々しいなぁ、解ってる癖に。わざとらしくボスなんて呼ぶなよ」
「クフフ…僕には何の事だかさっぱり見当も付きませんが」

返って来るのははぐらかす言葉と、わざとらしい笑顔。
あぁ、これもいつもと同じ。




例えば、握った手を引っ張って、細い躰を抱き締めてみる。
相変わらず身長は俺より高くて、悔しい。
俺だって身長は伸びているのに、この差は初めて逢った時から縮まらない。

「どうしました、ボス?」
「また同じ台詞…。骸頭良いんだし解ってるだろ」
「あぁ、番犬が傍にいなくて寂しいんですか?任務に就かせたのは君自身なのに」
「違うし、獄寺君は番犬じゃないよ」
「直ぐ獄寺隼人の名前を出す辺り、少なからずそう思っているんですね。悪い人だ」

広くない胸に埋めた顔。
布越しに感じる鼓動。
とくとくと流れる血は早くも遅くもない、平常時と何も変わらない。
…あぁ、これも、同じ。




例えば、後頭部に手をやって顔を引き寄せ、唇と唇を合わせてみる。
触れた唇は柔らかくて、でもひんやりしてて、こいつらしいっちゃらしい感触。

「…どうしました、ボス?」
「…お前ホント強者だよね。これだけやっても未だそういう顔出来んの」
「この地で育てば、自然キスは挨拶として身に付くものですから」
「生憎俺は日本生まれの日本育ちなの。キスが挨拶なんて習慣ないよ」
「おや、では君も漸くイタリアっ気が出て来たって事ですか。良い傾向です」
「イタリアっ気って何だよ。良くないし」

こいつとする初めてのキス。
此処まですれば何か反応あるかと思ったのに。
返って来たのは、何処までも軽い言葉と、いつもと同じ、笑顔。
…いつもと、同じ。

「じゃあお前は、誰にキスされても挨拶だって笑えるの」

「まぁそうですね」
「深いのでも?」
「流石に深いのは挨拶じゃしませんよ。何処の中2ですか君は」

嘘。
嘘ばっか。
俺知ってる。

お前があの人にキスされた事。
その時のお前の反応。
只のフレンチキスなのに、あの時お前は。

俺が何しても、機械的に、最初から決められてる様な反応しかしない癖に。

あの人に少し触れられただけで、お前はあんな顔するんだ。

あんな、


今まで一度も見た事ない様な、


笑顔、を、見せる。




あの人にだけ。












どうしたら壊せるの、



お前の、その、機械みたいな笑顔、




俺が、壊したいのに。





どうやっても壊せないのに―――











「ここにいたの、骸」



「…恭弥っ!」












―――あぁ、









俺が壊したかったのに。












fin.

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