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□残りの月
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「暫く置いて下さい」

ワォ、唐突だね。
インターフォンが鳴ったからドアを開けたら、そこにはローラーの付いた大きいバッグを引き摺った骸がいた。
その大きさ、お泊まりセットなんて可愛い量じゃないよね。
言葉通り暫く居座る為の量だよね。

「どうしたの、急に」
「家が壊れたんです」
「壊れたも何も、あそこ元々ボロボロじゃない」
「そんなレベルじゃないんです。今あそこカオスですよカオス」

君の髪型が1番カオスだと思うよ僕。
なんて口には出さないよ、言ってもまるで意味がない事は過去の付き合いで良く解ってるから。

「とりあえず裏の業者に頼んで設備を直して貰ってるんです。それが終るのが、早くて今月末で」
「今月末って…今まだ日にち一桁なんだけど」
「だから暫くって言ったじゃないですか」
「暫く過ぎだよ」

仕方がないな。
今黒曜センターがどうなってるか知らないけど、愛する骸をそんなカオスな空間で過ごさせる訳にはいかないよ。
一緒にいられるのは嬉しいしね。

「解った、月末まで置いてあげるよ」
「本当ですか?」
「勿論。上がって」
「有難うございます雲雀くん、大好きですっ」

負けないよ、僕だって大好きさ。
愛しい愛しい僕の骸、
君の我が儘だったら何だって聞いてあげる!

「千種、犬、クローム!承諾得ましたよー」

…ん?

「おっしゃ!世話になんぜアヒル!」
「…助かる」
「お邪魔します…」

…んん?

「へー、イイ所住んれんらな!」
「犬、靴脱いで」
「骸様…私が持つわ」
「有難うクローム。でも大丈夫ですよ」

…ちょっ、おかしくないこれ。
おまけ付き過ぎなんだけど。
っていうかそもそもおまけいらないんだけど。

「骸、ちょっと」
「はい?」
「何でペットまで付いて来るの」
「おや、僕1人だなんて一言も言っていませんよ」
「………」

僕は1人暮らしの筈だよ。
なのに何でこの数分の間で、見事5人暮らしする事に決まってるの。
2人までなら良いよ2人までなら。
あとの3人っていうか3匹、邪魔以外の何物でもないんだけど。

「骸様、お願いですから此処は壊さないで下さい」
「解っていますよ。此処がなくなったら、今度こそ今月中は路頭に迷う羽目になりますからね」
「大体何の夢見てたんれすかぁ?」
「ん?…あぁ、大した夢じゃありませんよ」
「骸様…?」
「只ちょっと…アヒルを1匹狩る夢をね」

黒曜センター壊したの君なの、骸。
しかも寝惚けて?
更にアヒル狩る夢?
…アヒル、って…。

「あぁそうだ、雲雀くん」
「…なに」

咬み殺して良いよね?
骸以外。
僕と骸の愛ある生活を邪魔する様な輩には、出て行って貰わないと。


「この子達に手を出したら、犯しますよ」


…………。


「…ゆっくり、していきなよ」



今日も僕は骸に敵わない。

































「あー!骸さんまた壁に穴空けたんれすか!」
「忌々しいミカンの夢を見ました…」

「骸様…この部屋電気付かないの?」
「今朝、寝惚けてトライデントで叩き割った様ですね。爽快な目覚めでしたよ!」

「…骸様。家のあちこちに蛇が出るんですが」
「仕方ないじゃないですか。雲雀くんがお触りするんですから」


「骸様」

「骸さん」

「骸様」



僕の家、倒壊寸前。
君どんだけ破壊衝動に満ちてるの。



「……………ねぇ、骸」

「はい?」

「出て行っ」

「出て行けとか言ったら馴らさずに突っ込みますけどそれでよろしいですか」

「…………………せめて蛇消してよ…」

「嫌ですねぇ雲雀くん、君が原因でしょう?」




やっぱり今日も僕は骸に敵わない。


















月末、骸達が黒曜センターに帰る頃には、


僕の家は屋内全ての壁を吹き飛ばされ、


只のどでかい1つの部屋になっていた。















…そんな君でも愛してるよ。












突っ込まれるのだけは嫌だけどね!












fin.

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