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□ニル・アドミラリ(無関心の意)
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優しく。

別け隔てなく。

誰にでも笑い掛ける癖に、

本当は誰にも興味がない。


君と僕は似ています。






































廊下で見掛けた、僕と同じ背丈の男。

いつも沢山の友人や女の子に囲まれて、彼の周りには笑顔が絶えない。

彼自身が笑顔を絶やさぬから、彼の周囲も釣られて笑う。

“人気者”、その言葉を地で行く少年。


「お、骸!」

「こんにちは、山本武」


君は僕の様な人間にさえ、他の人達と同じ様に笑い掛ける。

いつも一緒にいる沢田綱吉や獄寺隼人の僕への態度に、まるで影響される気はないらしい。

僕の経歴を考えれば、此処まで友好的な態度など取れる筈がないのに。


「相変わらず人気者ですね」

「そうか?」

「ええ。君に会う時、君はいつも人に囲まれている」


沢田綱吉や獄寺隼人と違い、君はあの時直接僕と相対した訳ではないから。

そう考えて納得してはいたが、ずっと引っ掛かるものがあって。

その理由を見付けて、理解した時、驚く程すんなりと納得出来た。


あぁ、そうか。
彼は僕に興味がないんだ。
だから僕に笑い掛けるんだ。


「…ねぇ、山本武」

「ん?」


人好きしそうな顔。

弧を描く口許はいつもと同じ。


「君と僕は似ています」


君は悟い人。

いきなりの僕の言葉に周囲の人間はいぶかしげな顔をするけれど、君の笑顔だけは崩れない。


「そんな事ねーよ。お前程キレイじゃないのな。似てんのは身長くらいだろー」

「おや、褒めてくれているんですか?」

「勿論。俺お前好きだからな!」

「これはこれは…こんな場所で告白だなんて、大胆な男だ」

「惚れた?」

「冗談は休み休みどうぞ」

「ちぇ、つれねーのな」


休み時間の終了を告げるチャイムが、騒がしい廊下に鳴り響く。

君の周囲に集まっていた人達が、蜘蛛の子を散らす様にそれぞれの教室に戻って行く。

君も、沢田達の待つ教室へ戻る為に歩き出す。


「骸はどーすんだ?」

「僕はこれで失礼しますよ。雲雀恭弥にでも見付かっては具合が悪いですし」

「そっか」


見ている者がいなくなっても、君の口許は固定されたまま。

やはり、君と僕は似ている。

吐き気がする程に。


「山本武」


すっと、温度の落ちた声。

だって仕方がないでしょう?

君を見ていると気分が悪い。


「僕は君が好きですよ」


いつもの僕の様な、不必要な笑顔は消した。

だって不必要。

君には、どうせ解ってしまうのでしょう?


「――俺はお前が大好きだよ」


ほらね。


優しく。

別け隔てなく。

誰にでも笑い掛ける癖に、

誰にも興味がなくて、


とんでもない―――嘘吐き。



「早く行った方が良いのでは?」

「おー。気を付けて帰れよ。ヒバリに見付かんねぇ様に」

「ええ、そうします」

「じゃな!」


僕に背を向けて走り去る君の姿。

僕に似て、…否、僕などよりずっと厄介な道化の姿。


僕は君が好きですよ?

ええ、好きですとも。


僕は君に似て、嘘吐きですからね。














『僕は君が好き(嫌い)ですよ』


『――俺はお前が大好き(大嫌い)だよ』












同族嫌悪、なんて。











あぁ、吐き気がする程愛しい!












fin.

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