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□何を見たの?
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「雲雀くん」
「なに」
「僕達、もう終りにしましょう」
「ワォ、寝言は死んでから言ってよ」
「死んだら言えません。寝てからの間違いです」
「僕にとって死ぬと寝るは同義だよ」
「じゃあ君は毎晩死んでる訳ですか」
「人は毎日生まれ変わるのさ」
「何キャラ!?」

ソファに身を預け、パイナッポークッションを抱き締めながら骸が溢した。
その瞳はテレビを凝視。
お昼時によくやってる、奥様向けの情報番組。

「もう嫌なんです、君といるの」
「ふぅん。何でさ」
「毎日毎日猫耳着用を仄めかされれば嫌にもなります」
「そんなに僕の猫耳姿が見たいんですか仕方ないですねぇ今日は猫プレイですかクハァハァとか言ってたの何処の誰。第一嫌なら頭の上にあるの取りなよ」

骸の髪と同じ色の猫耳が、髪の隙間から覗いている。
その耳にはピアスが付いて、いかにも骸の耳が猫耳になったらこうだろう、という出で立ち。
でも待って。
僕が用意したのは猫耳だけで、ピアスは君の私物でしょ。
わざわざ猫耳にピアス付け変えるとか、君ヤル気満々じゃない。

「取ったら怒るでしょう」
「終りにしたいんでしょ?だったら僕を怒らせて君を嫌わせれば簡単に終るよ。何でそれをしないの」

そのくらいで君を嫌いになったりする訳ないけど。

「兎に角僕はもう終りにしたいんです!君の趣味に付き合わされるのも君に好き放題犯られるのも君に抱き締められるのも君に名前を呼ばれるのも君に好きだと言われるのも君に」
「どんだけ言うの」
「はっきり言っちゃえば重いんです!」
「君に言われたくないよ。僕の家に散乱したパイナッポーグッズ誰が持ち込んだと思ってるの」
「勿論僕ですよ。君が僕を一瞬たりとも忘れない様にって」
「うわ、コイツ超重いんですけどー」
「アンタに言われたくないんですけどー」

骸が抱くクッションだけじゃない。
今の僕の家凄いよ。
スリッパ、絨毯、カーテン、テーブルクロス、シーツ、…果ては壁紙。
何処見たってパイナッポーだらけで、此処は日本だっていうのに南国にいる気分。
大体こんなものなくても僕が骸を想わない時なんてないのに。
心配性だね可愛いよ骸。
猫耳の君も勿論可愛いけど。
今すぐ突っ込んで啼かせたいよ。

「第一雲雀くんは本当に僕の事想ってくれてるんですか?僕をダッチワイフか何かと思ってません?」
「何言ってるの、そんな訳ないじゃない。精々こんにゃくだよ」
「もっと悪いです」
「こんにゃくに失礼だよ」
「君の言い分の方が失礼ですよ」

あぁもう、そろそろ苛々して来た。
一体何なの、今日はどうしたの。
君の奇行はまぁいつもの事だけど、今日のつっかかり方はちょっとむかつくよ。
第一終りにしましょうとか、どういうつもりで。

「ねぇ、僕達別れましょう」
「何で」

クッションを抱く君の腕に力が込もったのが、見てて解った。


「君を嫌いになったからです」










































朝日が眩しい。
実に爽やかな朝だ。
隣でクフンクフン泣く骸を見下ろして、にやりと笑う。

「で」
「…はい?」

腰が痛むのか緩慢な動きで、僕の方に視線を向ける骸。
昨日の猫耳は付いたまま。
うん、猫プレイ良かったよ。
語尾ににゃんとか寒気がするよとか思ってたけど、アリだね。
ハマりにハマって結局昨日の夕方から今の今まで犯り続けちゃったよ。

「何を見たの」

昨日とはうって変わって、骸は素直に僕に擦り寄る。
僕の腰に腕を回して抱き付いて、お腹に顔を埋めて。
甘えたいのかい骸、君は本当に可愛いね。

「四月馬鹿特集です」
「エイプリルフールね。訳さない」

骸の頭を撫でながら、溜め息。
そんな事だろうと思ったよ。
1年で唯一嘘を吐いても良い日。
昨日はやたらそんな番組ばっかりやってた気がするし、骸はずっとテレビ視てたしね。

「…怒ってます?」
「何に」
「終りにしましょうって、言った事」
「怒ってないよ。どうせ本気じゃないだろうと思ってたから」

僕も嘘を吐いたしね。
君をこんにゃくと思ってるとか。
そんな筈ないでしょ、君はこんにゃくなんかじゃないよ立派なパイナッポーだよ。

「良かったです…」

顔を綻ばせる骸は堪らなく可愛い。
あぁ、一晩中犯り続けたのに、また元気になって来ちゃった。
健全な男の子だし、仕方ないよね。

「骸、もう1回しよう」
「1回で終るんですか?」
「無理」
「でしょうね」

組み伏せる僕に抵抗もせず、微笑む骸。
愛してるよ骸。
君の可愛い嘘くらい、許してあげる。

「あ、でも」
「?」


そう、許してあげる。
許容範囲内だったらね。




「大嫌いって言った事は、許さないよ」












青ざめた骸もまた、可愛くて欲情する。












解るね、骸?








喩え冗談でも、


言って良い事と悪い事はあるんだよ。












(大嫌いなんて言ってません、嫌いって言ったんです!)
(2回目。もう本当に許さない)
(墓穴ー!!!)












fin.

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