名探偵

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煙草の煙がフワフワと浮かぶ。

煙を目を細めていれば、

「ナマエ顔が歪むやめろ。」

と、シュウイチに叩かれた。

「痛いわよ。」

「痛く感じるようにした。」

「そう…。」

「…。」

再び沈黙。

私はこの沈黙すらも心地よかった。

もう一本お互いに無言で煙草に火をつける。

夢のような心地にさせるこの雰囲気に私は少し前のことを思い出した。




「秀、ごめんなさい。本当に…。」

あの日は春に雪が降った日だった。
まるで、私の心を代弁したように。

潜入捜査の辞令が出た三日後、私は秀一に別れを告げた。
辞令内容は同じ捜査官にも機密だった。

多分秀一は察していたと思う。
何せ辞令が出されてから目に見えて私は悩んでいたからだ。

それに対してあの時の秀一は驚くほど冷静だった。

「そうか…。」

ただその一言。
最後に一度深いキスをして私達は背を向けた。


彼と再開したのはそれから三年後だった。

その時は、赤井秀一ではなく、諸星大であったが…。

ーーー

「ナマエ、何か考え事か?」

過去を振り返っている時どうやら意識が何処かにいっていたらしい。
シュウイチの冷静な声に思考が戻った。

「さぁ、どうかしら。」

まさか、貴方のことを考えていました。何て言えるわけもなくはぐらかした。

「ホォー」

何やら疑惑的な視線を向けられたがシュウイチはこれ以上は聞くつもりはないらしい。


「そろそろ、向こう(米国本部)から送られてきた報告書に目を通しましょう。終わらなくなるわ。」

ほとんど終わりかけの煙草を灰皿に押し潰すと彼の手を引いてジェームズ達の元へと向かった。




ある日の休憩時間の話。
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