名探偵
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「おねぇさん、このバイオリン重いんだね。」
ボオヤは嘘くさい笑顔と可愛らしい声を出しながら、私のバイオリンケースを引っ張った。人の荷物をいきなり引っ張るんじゃないよ。いくら子供でもその仕草は中々しないよ。
それにしてもたいした演技力だ。
「ええ、そうかもね。じゃあ、私は急いでいるの。さようなら。」
彼は頭が切れるし面倒だ。ここは逃げた方がいい。例え怪しいと言うことに確証を得らせてしまってもだ。
多少乱暴にボオヤを振り払い歩き出すと、
「うわぁーん、お姉ちゃんに置いてかれたぁ。」
大声で泣きはじめた。
「…。」
無視をして歩き去ろうとしたが流石日本、どれだけ治安の悪い米花町ですら人が徐々に集まる。
「チッ」
仕方がなく小さく舌打ちをしてボウヤに駆け寄った。
「ボウヤ、お姉ちゃんとパフェ食べに行こうか?」
「うんっ。」
なんて事だ。さっきまで泣いていたのにケロッとした顔でしかもちゃっかり手まで握りしめられて可愛く返事をされた。
周りの人達は口々に
よかったね。
などと言いながら去っていった。
この、エセ小学生。
仕方がなくボウヤを連れて某ファミレスのパフェを頼んであげると彼は不服そうな顔を少し見せながらも渋々食べ始めた。
その間にもいつ話を切り出そうかチラチラこちらの様子を伺っていた。
終始探るような目をしている。
時計を見ればあれから一時間経過している。
いくら暇だからといっても二時間も休憩する余裕はない。それなりに事務作業があるのだ。
仕方がない、こちらから話を切り出そう。
「ボウヤ、率直に言うわ。何のようかしら?」
「…お姉さん、お店のなかでもサングラスを外さないんだね。名前は何て言うの?」
ボウヤの雰囲気がガラリと変わった。
そう、これが工藤新一なのね。
そう言えばこの子ジョディーさんが気に入っているクールボーイだったわ。
今後接触する機会もあるかもしれない。偽名を使ってもすぐに露見してしまうわね。こ
「目が光に弱いのよ。ミョウジ ナマエよ。ボクの名前は何て言うのかしら?」
「江戸川 コナン 探偵さ。」
「そう、探偵なの。小学生なのに随分と物騒な遊びをしているのね?」
にんまりと口許を歪めれば彼はほんのすこしムッとした雰囲気になった。
この辺はいくら頭が切れてもまだ高校生ね。感情コントロールが甘いわ。