名探偵
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7時30分
ピピッ ピピッ
この世で私が一番嫌いな電子オン。
そう、目覚ましが鳴り響いた。
『チッ』
思わず舌打ちしながら目覚ましを止めた。
ベッドから起き上がりノロノロと顔を洗い歯を磨いて髪を整えたら新調したパンツスーツに腕を通す。
それから化粧をしてサングラスをかけて一度鏡に向かって微笑む。
ここまでの行程は毎日ほぼ変わらない。
ホテルのロビーを速足で歩いてiPhoneに送られてきているであろう事務局の地図をcheckして一瞬で暗記し、形跡が残らぬよう削除する。
それにしてもこのホテルから随分と遠いところにあるのね。
全く気が利かないわ。
サングラスの下で目を薄めた。
ピッ
予め受け取ってあった電子IDとパスワードを入力して日本の事務局に入る。
印象は『殺風景ね。』と、そう呟いたとき、「やぁ、ナマエ君。」後ろからboss、ジェームズの声が聞こえた。
「こんにちはジェームズ。相変わらずダンディーね。」
ナマエは口角をあげると
「ナマエ君は五年前よりも色っぽくなったものだな。」
何て、言われた。
『フフッ、そうですか?でも、そうかもしれませんね。本当に…。』
少し廊下で世間話をしていると、鋭い視線を感じた。
この視線は彼だ。
ナマエは視線の主がいる奥の部屋を押し開けた。
『シュウイチ…。』
『ナマエ…。』
数年ぶりに彼らの視線は交差した。
赤井秀一。
相変わらずタバコとブラックコーヒー、人相の悪い顔で目の下に物凄い隈を作り黒いニット帽を被っていた。唯一変わった所と言えば髪の長さ位だろうか?
あぁ後、雰囲気が変わったわね。
宿敵(コイビト)に振られたからかしら?それとも…彼女を殺されたからかしら?
彼は私が日本に来ることを知らされていなかったのか。私を見たときに彼にしては珍しく目をいつもよりも開いていたからね。
『シュウイチ、一匹狼はトウブンお預けよ。今日から私が貴方のバディー。精々私の足を引っ張らないで頂戴。』
挑戦的に彼を見やれば
「ホォウ、お前がか、ナマエ。お前さんこそ昔のように俺を困らせるなよ?」
予想通りあのニヒルな笑みを浮かべ挑戦的に返してきた。
『私を誰だと思っているのシュウイチ
、ナマエ ミョウジよ。』
にっこりと微笑めば
「楽しみだな。」
と、鼻で笑われた。
懐かしい時間、懐かしい空気。
時間が経てば全て消え去る。
灰色×赤
ひんやりと対峙する。