進撃 あなたの為に
□崩れ去る日常
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ーーーーーー壁内ウォール・ローゼ
『それじゃアリエラ、行ってきます』
少女の父は、そう言って朝早くに家を出た。
普段は夕方までには帰って来て、夕飯の支度を手伝ってくれるのだが……
何故かその日だけは日が暮れても帰ってくる気配がなかった。
「お父さん、まだかな……」
結局1人で作った夕飯は、父親のぶんだけ残されていたがそれも既に冷えてしまっていた。
母親は、いない。
アリエラが生まれてすぐに他界して、その後はずっと父親と2人暮らしだ。
1人の時間も慣れていたはずだった。
ーーーーーーだけど、今日はやけに寂しい。
アリエラは言いようのない不安を抱え、ただじっと父の帰りを待っていた。
ーーーーーーーーーーーーーー
…どれくらい経っただろうか。
そろそろアリエラにも睡魔が襲ってくる頃だった。
うとうとと、目を閉じては開き、頭がふらふらしていた少女の耳にふと、夜中とは思えない程の大声が外で響いた。
「アリエラちゃん!起きてる!?」
びくっと肩を震わせて、声の主を確認する。
「……ロ、ロウマおばさん…?」
「起きてるわね、ちょっといいかしら…!」
向かいに住むロウマ夫人だった。
アリエラが扉を開けば、夫人は焦った表情で彼女の肩を掴んだ。
「……いい?落ち着いて聞くのよ……」
ーーーーーそれは、10才の少女にはあまりにも悲しい出来事だった。