ウサギの物語
□二人の少女No1
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菜月サイド
(菜摘に気安く話しかけるな。)
菜月は、体中から殺気を出していた。
前方にいる双子の姉を見ると、変な男が近くにいた。思いっきり睨むと今度は姉に話しかけやがった。
(いらいらする。…駄目だ、抑えろ。殺しちゃ駄目だ。)
必死で自分を抑制している菜月をよそに、トンパは尚も菜摘と話している。
(離れろ。菜摘から、離れろ。)
正体の分からぬ男と姉が接触することは、シスコンの菜月にとって拷問のような出来事だった。
小さい時から姉に近づく者は全て排除してきたというのに。
(こんなところで菜摘を汚すことを許すものか。)
「おい。菜月。殺気抑えろよ。皆引いてるぞ。」
いきなり隣から声をかけられて一瞬攻撃態勢に入りそうだったが、その人物のことを思い出し、踏みとどまった。
「ゴメン、姉に変なノミがついてる。」
「?ああ、新人潰しのトンパか。気をつけないと、毒で潰されるぜ?」
先ほどの会場でであったキルアという少年と会話しながらトンパに殺気を放つのはなかなか難しい。
それでもやめないのは、もはや根性、執念の部類に入る。
「ジュース、もらったんだ。…毒じゃなくて下剤だよ。」
言葉少なに答え、キルアの間違いを正すと、気づいてたんだ、と驚いていた。
そろそろ菜月も我慢の限界だ。
「行ってくる。」
「…ほどほどにしとけよ?殺気でびびってる奴だぜ?」
「分かってるつもり…。」
絶対わかってねー、というキルアの声を無視して姉の場所へ向かう菜月。
(さて、どうしようかな。脅すだけじゃ面白くない。)
怖いことを考え、平然と走る。
トンパ、哀れ。健闘を祈る。
次回、菜月さんが大暴れ!