夢物語3

□好きだ
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「ねぇ、翔ちゃん...どうしよう...」


さっきからずっとため息ばかりついていたゆうが口を開いた。


翔「なんだ?もう腹減ったとかか?」

「んー今は何も食べたくないなぁ」


翔「なんだよ。珍しいな。病気か?」



いつもこの時間なら「翔ちゃんお腹すいたよぉ」なんて泣きついてくる。
パートナーだからしたかなくチョコとかやるけど、実はお菓子をあげた時の顔が可愛いから毎日お菓子を持ち歩いてるなんて誰にも言えねぇ。




「はぁ....」


翔「どーしたんだよ。どっか痛いなら保健室連れて行くぞ?」



「.......胸が痛いの....」



翔「は?」



「あ。ねぇ翔ちゃん?もし、もしもの話なんだけどさ。」


翔「お、おう。」


「貴方はある、恋愛禁止の学校に通っています。で・す・が、貴方はある2人の異性に告白されてしまいました」

翔「お、おう....」


「その2人とは仲も良かったのですが2人にはどちらかを選んでくれと言われます..恋愛禁止とわかっていながらも、好きだ。退学の覚悟はあると言います。貴方ならどうします?」

翔「あらすじ長ぇよ」



つかそれお前じゃん。

そう思うとなんだかモヤモヤした気持ちが出てくる。



翔「正直に言えよ。相談乗ってやっから」


相談乗るといいつつ、2人とも振ってしまえなんて真面目に言いたい。



つか、たぶん言っちまう。



恋愛禁止なんだからやめとけなんて言ってな。



でもそれは俺の独占欲って奴で、いつも俺の後をちょこちょこついてくるこいつを離したくないとか、ただ単に俺もこいつに恋してるだとか。




つかその2人って誰だ?




「じ、実は...こ、告白と言うのをされまして...」


翔「2人に?」


「う、うん...」


翔「だ、誰だよ」


もし、レンとかトキヤだったら負ける気がする。
だってあいつら俺がゆうと喋ってるときとか真面目に目がやばい。

だって今も現在進行形でレンがドアのそばからこっち見てるし。


「レン君と、トキヤ君....」


あ、負けたとか思いたくねぇーけど思ってしまう。

実際2人ともゆうと仲良いし、レンとはこの間屋上で2人でいるとこみたし、トキヤは弁当作ってもらってた。


なにもない俺に腹が立つ。



こんなことなら、もっとなんかしときゃよかった。



「で、でも、恋愛禁止だし..どっちか選んだら片方に申し訳ないってか...」


すぐこーやって、人のこと考える。

ほんと優しい奴だよな、お前って。



翔「じゃ、実際のとこ、お前はどっちが好きなんだよ」



冷静に、平常心でなにげない顔を装って聞く。

もう俺は眼中にないんだ。

できる限り好きな奴に幸せになってもらうようにアドバイスするしかねぇーのかな...

そう思うと心臓のあたりがキュッと締まったような感覚で、苦しい。悲しい。



こいつのことが愛おしい。




「じゃ、じゃ、もしもシリーズね。女の子Aちゃんは仲の良いB君とC君に告白されました。その学校は恋愛禁止ですが付き合って欲しいと言われました。で・す・が、AちゃんはD君のことが好きです。D君とは特に接点もなく、脈は薄い!さぁAちゃんはどうする?」


翔「っ.........」





真面目にビックリした。





こいつが好きな奴をいるなんてまじかに聞いて心臓をわしずかみされたみたいでもうどうにかなってしまいそうだ。








やばい泣きそう。






いや、来栖翔、いつもの男気はどうした?






笑顔で送り出せ。
悲しい顔すんな。


















翔「それは...もちろん、何も言わないだ。」











何言ってんだ俺は。



送り出すんじゃないのか?


幸せになってもらうんじゃないのか?



自分の欲でこいつの幸せを取り上げていいのか?







「だよねぇ.....」






なんて悲しい顔してるゆう。

ほんと俺サイテー。





翔「じゃ逆に聞く、AちゃんとD君はどんな感じなんだ?」




とことん自分の欲に溺れて、そして自滅しちまえ。






「んー........D君とは、....いつも教室で話たりするけど、B君とかC君とかよりも全然、なんか甘くないってゆーか...」


話してるうちにみるみるテンションも頭も下がっていってる。





そんなに大切なのかよ。





「いつも、後ろをついていくと嫌そうにするし..、時々顔合わせてくれないし...いつもお菓子くれるけど嫌そうだし.........あ!」


そうか、そいつさいてーだな。ん?ちょっとまてよ。
いつもお菓子?俺以外にお菓子もらってるってことか?

でもこいつは休み時間はずっと俺の隣で.....


そう思って顔をあげるとゆでダコみたいに真っ赤なゆうと目があった。







嘘だろ........






「....翔ちゃん、ごめん、...嫌だよね...気持ち悪いよね..ごめんね」


それだけ残して、泣き顔で俺の前から走って逃げた。




もちろん俺は追いかける。



後ろでレンとトキヤがなにか言ってた気がしたがそんなの別にいい。





お前がそんなこと思ってたなんて





走っている途中でゆうの腕を掴んで誰もいない屋上に連れていく。


















「翔ちゃん........っ」


涙流して小さく震えるゆうは俺に嫌われるのを怯えてるみたいで、実際、すっげー嬉しい。






有り余る感情を腕に込め、力いっぱい抱きしめる。




暖かくて、柔らかくて、くせになる。




「...........好きだ。....俺はお前のこと好きだ。ずっと前から。大好きだ」



腕を離しゆうの顔を見ると真っ赤な顔して泣いてた。






ありがとう。




今泣いてんのは、俺のこと想ってだろ?



嬉しすぎてどうにかなっちまう。















「私も...私も翔ちゃんのこと大好き...!」













太陽みたいな満面の笑みで言われた言葉にインパクトありすぎて、俺の心臓、真面目に止まったわ。












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ねぇどーして嫌な顔するの?

て、照れ隠しだよっ悪いか!////

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