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□ちぎれた小指
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最近薄々と気づいていた。


お互いを思う気持ちが薄れてきていること。


嫌いになったとはまた違って。


言葉にうまくできないけれど、言うなら相手に関心が無くなった。


そんなこと。



そのうち別れ話はされるだろうな、とは思ってた。



ただ、意外にも早かったな。



「春歌、別れよう。」


「…そっか。」


もう問い返すこともない。


しっかり理解できてる。



「すばるが別れたいんなら、私は何も言わないよ。」


「春歌がそういう奴でほんまによかったわ。」



ふっと笑うすばる。


もう思い出のような雰囲気だね。


「リスキーな恋に憧れちゃったんだよ。」


「そやなぁ…。」


なんでだろう、悲しいとまだ思えない。


頭ではわかっているはずなのに。


心がわかってくれない。


受け入れてくれようとしない。


「でもまぁ、多分俺らこの先も友達としてやっていけるんやで。」


「そんな感じだね。きっとそうだ。」


口ではそう言えるのに。


笑顔でいられるのに。


「そういえばさ、前、赤い糸がとかって言ってたよな。」


「あー…。そういえば。」


付き合って間もない頃かな。


そんな恥ずかしくて、初々しいことができてたんだな。


「糸はどこいったんやろ。」


「糸っていうかさ、小指が無くなった感じだよね。」


「そう考えるか。」


糸はまだあるのに、それをしっかりと結ぼうとしないだけ。


結ぶ小指がない感じなんだ。


「じゃあこれからは恋人じゃなくて友達だ。」


「仲のええ部類のな。」


「あ、評価高いね。」


「だってお互いのことよお知っとるし。」



どう返答すればいいのかわからなくて曖昧に微笑んだ。


「じゃあ…、帰るね。」

「おお、また今度。」

「なんか別れた後の言葉じゃないよね。」


「だってまた会うやん。」


「そっか。じゃあ『またね』。」


手をふってドアからでる。


いつもと変わらない帰り方。


違うのは二人の関係だけ。



なにが、ダメだったかな。


もう、必然だったのかな。



ちぎれた小指
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