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□38.8c°
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「…これはやばいな。」


手元の体温計がさす温度は38.2。

さすがに、平熱が高いんよってレベルじゃない。


いつもなら、今日休みだし寝てるかで済むんやけど今日ヨコと会うし。


…ヨコと会うの久々やろ。

ドタキャンしたら…文句言われるか落ち込まれるかやな。


前者ならまだしも勝手に落ち込まれたら困る!


しゃーない。


…いくか。


や、今度ヨコとヒナと遊ぼうって約束してんねんけど。


それはそれ、これはこれやん。


…とりあえず厚着するしかないな。


あっついけどしゃーない。

我慢我慢。



季節外れな格好をして待ち合わせ場所に向かう。


うう …。満員電車辛いわぁ。

待ち合わせ場所にはもうヨコがいた。


「あ、ヨコ。ごめ、ちょい遅なってもた。」


「いや、別にええねんけど…めっちゃ冬の格好やな。」

「衣替えに失敗してクローゼットん中冬物なって。」

「ふーん…。」


疑ってる眼差し。


ばれてる!?


「…まぁお前変な奴やし。」


「…そっすか。」


変な奴って言われた。

ヨコやって似たもんやろ。


…頭痛いわぁ。


「で春歌どこ行きたい?」

「んー。どこでもええ。」


遠慮とかやなくて考えたない。


まっすぐピシッと立ってるだけでつらいねんで。


まぁ言われへんけど!


「じゃあ…。なんやろ。映画か買い物かメシ。」


「んー…。」


考えるふりして頭をおさえる。


買い物は辛いな。立ちっぱやん。


映画…は音でかかったら嫌やし。

かといって恋愛ものよりアクションぼが好きやからな…。


「昼!食べいこう。」


「わかったー。」


正直食べれる気がしないけどまぁええわ。


「なに系?」


「なに系でもない…。」


「それちゃうな。」

「ボケやボケ。」


や、もうヨコが食べたいのでええねん。


「ラーメンは?」

「お前っ、彼女ラーメン屋連れてくか。」


「それもそやな。じゃあなんかそこらへんのカフェ。」

「わーった。」


何も考えずにうなずいているとヨコに頬をグッとつかまれた。


「いっ、いひゃい。」

「お前、なんか隠してるやろ。つか熱ない?お前。」


「あ、そーっすね。」


「何度?」


「37.5…。」


とりあえずサバよんどく。


「嘘やったら噛みつくからな。」

「えー…。」


正直噛みつかれてもええんやけど。

「あ、ヒナの八重歯で噛みついてもらうからな。」

「38.2。」

「お前…。なんで来んねん。」

「やってヨコいじけるやん。」

「アホか!来られた方が困るわ!」


パンっと頭をはたかれる。


「お前の体が一番やろ。」

「うー…。ヨコがイケメンに見えるわ。」

「そんなんええからさ、とりあえず家行くからな。」

「え、ヨコん家?うち?」

「近いほう。」

「ヨコん家がええなぁ。」

「じゃあそうするわ。ほらいくで。」


ぐっと手をひかれる。


冷たくて気持ちええわ。


ヨコって思ったより優しいわ。

惚れる。

や、惚れとるけど。


「ヨコ、大好き。」

「…ん。」



38.8c°
 

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