short
□行かないで
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そんなことわかってた。
忠義がジャニーズに入ってすぐ。
いつかは東京に行っちゃうんだって。
解ってる。解ってる。
つもりなんだけどなぁ…。
「春歌?どしたん?」
「っ何でもないよ。」
別に家が隣だっただけ。
ちょっと他の人より仲良しだっただけ。
恋心を抱いてるだけ。
それだけなのに、苦しい。
だってまだ今日の夜まではこっちにいるのに。
口に出せないのが私の弱いところだ。
忠義だってわざわざ最後の日ここにいてくれてるのに。
知ってる。夜って言ったってあと4時間ぐらいなこと。
最終便にのって東京に行っちゃうんだ。
泣きそう。でも泣いちゃダメ。
お荷物になんかなりたくない。
背中を押してあげたい。
のに。込み上げてくる涙。
たわいない話を振ってくれてるけど頭に入ってこない。
今までずっと一緒だったのに。
こんなに思ってたんだ。
悔しい。
きっと東京には美人な人だらけなんだ。
私よりずっとおしゃれできのきく。
喉元でつっかえた言葉。
「行かないで」
なんて言えるわけない。