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□『勇気』に嫌われた少女。
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スポーツタオルで犬を拭く。


寒そうな犬をぎゅっとした。


「犬だもん…。私のこといじめないよね?」

二人に聞こえないよう小声で呟いた。


でも安田くんには聞こえていたようで。


安「さっきのもう一回言うて?」


「…はい?」

安「いじめとか…さ?何か隠してそうやから。」


怖かった。

いじめられてる私を避けるようになったら。

嫌われたら。

心の支えが消えてしまうのが怖かった。


「そんなこと……ないですよ。」


安「嘘、つかんでよ。」


ジッと見つめてくる安田くんは真剣そのもので。


丸「俺にも、話して?」

気づくとマルさんも隣にいた。


こんなガード下、びしょびしょで話すこととしては重いなぁ…。


「いじめ…なんですかね?私。」

安「…聞いたらあかんかもしれんけどどんなんされたん?」


「そんな大したことじゃないですよ。もの隠されたり、ちょっと殴られたりですから。」

丸「大したことやろ!!」

マルさんが大声をだした。

通る人達がこっちを見てくる。


安「何か言われたりは…?」

「『死んじゃえ』とかもう日常茶飯事なんでもうなんとも思わないです。」


本当は言われる度に心に何かがグサッと刺さる。

何度も死のうとも思った。


丸「早く気づけなくてごめんな…。」

「マルさんが謝ることじゃないですよ。」

安「死んじゃだめやで。僕らは大切やと思ってるから。」


『死んじゃえ』と言われた時とは違う何かが刺さった。

心地いい何かが刺さった。


自分は軽率だったんだと改めて分かった。


こんなに優しい人がこんなに近くにいたんだ。


「大丈夫ですよ。そんなに簡単に死にません。」


心から想いが溢れて泣いちゃいそう。


こんな優しい人がいて私はいいのかな。



希望を願ってもいいですか?



怖い気持ちをおさえるように子犬を抱きしめた。

end.
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