short

□ごめん、おめでと。
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今日は君の誕生日。

私は寒い寒い1月の寒空の下ぼっちです。

君を待ってます。

プレゼントも用意OK。

でも渡せません。

近いのに、こんなに近いのに遠いです。

いつの間にそんな遠く行ったんですか。

ちょっとひどいです。泣いちゃいます。

嘘です。


スマホのワンセグの中で笑う君に何だか無性に切なくなります。

一応幼なじみなんですよね?

私はもっと望んじゃいましたけど。


やっぱりそれぐらいじゃ駄目ですか。そうですか。

でも今日会おうって言ってますし、君が。

この季節に1時間の遅刻とは彼らしいです。

会って最初には"おめでとう"を言うつもりでした。

でもその前に文句が出ちゃいそうです。

もう電話かけちゃいましょう。

電話をかけました。生憎出ません。

天下のジャニーズ様です、流石です。

もう帰っちゃいましょ。

ため息をついて足を踏み出す。


ちょっと寂しい。

泣きそうになるのを堪えて歩いていると後ろにぐっと引かれた。


その腕の掴む感じ、よく覚えてます。

「遅かったですね。」

「…悪かったって。」

あぁ、もうこんなつもりじゃないのに。

笑顔で"おめでとう"って言うつもりだったのに。


「こんな時間に女一人ですからね。」

「分かってる。」

もう、そんな顔されちゃ無理です。

「誕生日、おめでとう…ございます。」

「ありがとう。素直に嬉しいわ。」

なんだ、もう。こんな歳になってきゅんとするなんて気持ち悪い。

でも君の笑顔がきゅんとさせます。

「これ、プレゼント。捨ててもいいよ。」

自分、可愛くないな。

なんか嫌になる。

こんなつっけんどんに渡す子なんていないでしょうね。ファンには。

「開けてもええ!?」

それでも嬉しそうに受け取ってくれるのは脈ありなんですか。

「どうぞ。開けちゃってください。」

中には君の色のマグカップ。

私が気に入っただけなんですけどね。


プレゼント開けた君の反応を横目でうかがう。

あ、なんだ。良かったちゃんと嬉しそうにしてくれてるじゃないですか。

「ありがとう。これ大事にするわ。」

「一生ものだもんね。」

そんな高いやつじゃないけど。

一生忘れてほしくないから言う。

「一生使うわ。お前から貰ったもんやし。」

「それは何より嬉しいことで。」

なんなんですか。もう。

「次はバレンタインやね。」

「どうせいっぱい貰うんだからいいでしょ。」

そんな大勢のなかの一個なんてやだ。

君にとって特別でありたい。

そう願っちゃ駄目ですか、

「なにゆうとんの。お前のは特別やし。」

「うわぁ、それ彼女さんにでも言いなよ。」

「おらんもん彼女。彼女にしたいやつはおるけど。」

うわぁ、何それ気になる。

私はちょっぴり沈んだ気持ちをまぎらわせるためにもう一度"おめでとう"と言った。



ごめん、おめでと。


end.
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