Luvholic

□Luvholic
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『頭を打って気を失っているが、目立った外傷もないからとりあえず様子をみよう。明日もう一度診せてくれ』



そう言った医者を玄関で見送り、リビングに戻って来たマネージャーが押し黙った空気を割るように口を開く



『これは犯罪なんだ。分かるよな…?
今からでも遅くないから…ってまっとうな大人としてはそう言いたいが…
でも、お前たちがこうしてしまった理由も痛いほど分かるんだ…
ヒョンとしては、お前たちを助けてやりたい…』



『ヒョン…』



『ユノ、もう時間も遅い。明日の仕事もあるし帰るぞ』


 
『一晩ここに泊まるよ』



『ダメだ。今のうちにマンションを出よう。余計なネタになるきっかけは作らない方がいい』


ユノは眉間にシワを寄せた。


『…ジェジュン?
1人で大丈夫か?誰か頼れるやついるか?
仕事が続くから2、3日は来れそうにないんだ』



『うん…大丈夫だよ。心配ばかりかけてごめん…。俺のせいで本当にごめん…』



『心配するな…。何かあったらすぐに電話しろ』



黙って頷く俺を抱きしめると連絡先を残して帰って行った。






玄関のドアが閉まり、急に静けさが戻った部屋に不安を感じる。


自分が起こしてしまった事の重大さとユノを巻き込んでしまった罪悪感。今までよりも更に行く先が見えなくなってしまった…


寝室へ入り規則正しい呼吸をするその女性の顔を初めて見た。


歳は俺と同じくらいだろうか?目を閉じている表情が幼くも見える。着ていた上着を探るが身元を知る手がかりは見つけられない。


きっと家族も心配しているだろう。
もしかしたら帰らない娘を心配して警察に連絡しているかもしれない。いや、そうしているのが普通だろう。次から次と湧き出す不安と恐ろしさに胸が押さえつけられる。


彼女が目を覚ましたらどう思うだろう。冷静に話し合ってくれるだろうか?全く、都合のいい話だよな…






冬の遅い朝が明ける頃、電話が鳴る。
電話番号のみのディスプレイ。でもそれがユノだと伝えていた。


『もしもし…』


『ジェジュン、俺だ。大丈夫か?』


『うん…まだ目を覚まさない。』


『そうか…ジェジュン仕事は?』


『白紙になったアルバムの曲作りのためにスケジュールが空けてあるんだ。皮肉にも役に立つよ…』


『ジェジュン…。』



[ヒョン!!もう出ますよ!!]



不意に電話口から聞こえた声…


『あぁ、今行く!』


電話の向こうのその会話に全身が地面に叩きつけられたように悲鳴をあげる。


『……チャンミナ?』


『あぁ、そうだ…。まだ何も知らない。余計な不安を与えたくないし、言うつもりもない』



…チャンミン。



苦しい、胸が苦しい。そして俺はこの苦しさから逃げるためにどれだけ大切な人を傷つけてしまうのだろう。
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