イナイレ 短編

□安心したのは俺の方
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次の授業は移動教室。

廊下の角を曲がると、同じように角を曲がってきた生徒にぶつかってしまった。


「きゃ、ご、ごめんなさい」

「わっ こっちこそすまん!」

「あれ… 風丸くんっ」

「名無しさんじゃないか、大丈夫か?」

少し慌てた様子で風丸が名無しさんを覗きこむ。



「あ、」

「なんだ、どこか痛むのか?」

「ううん 私は平気なんだけど、その…」

「?」

名無しさんは申し訳なさそうに口を開いた。

「風丸くんのワイシャツが、」


と、名無しさんの視線の先には風丸のワイシャツ。


「俺のワイシャツ?」



風丸がそれに目を落とすと

そこにはうっすらピンク色の



「口紅?」


名無しさんの細い唇のあとが着いていた。


「ううんっ、口紅じゃなくて 色付きのリップ!色も薄いから洗えば取れると思うけどっ、どうしよう…今すぐに洗濯するわけにもいかないしっ…」

眉を八の字にし 困った様子の名無しさんに風丸は笑った。


「気にするな。良くみなきゃわからないじゃないか」

「そうかな、」

「ああ。それに名無しさんが気になるなら学ラン羽織ればいい話だしさ」


「そう?ホントごめんね。それのせいで風丸くんが恥ずかしい思いしたらヤダなって思ったから…。そう言ってもらえてちょっと安心」


「…安心って。それ どっちかっていうと俺のセリフ」



「え?」





小さく呟いた風丸に 聞き返すも




「いや、なんでもない。ほら移動教室だろ、いくぞ」


「?…うん!」



「(名無しさんのぶつかった相手…)」

そういって風丸は胸に付いた名無しさんのそれを見つめる。












「(他のヤツじゃなくて 良かった…)」

*



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