トリコ 短編

□お前のために鼻を差し出す
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「ブランチさんはさ、」
「ああ?」
「私のこと、どのくらい好きなの?」

そういうと、突然の問いに彼は慌てて噴き出した。

「はあ!? いきなり自分何言っとるんや」
「だって、ブランチさんの口から、ちゃんと“好きだ”って聞いてないもの」

その言葉に、赤い顔をますます赤くさせるブランチ。

「そんなん、言わなくたってわかるやろ」
「それはそうかもしれないけど、口で聞きたいのよ、女の子は」
「かー、面倒くっさ」


そうして私が口を尖らせ、拗ねるのを見ると。
彼は頭をガシガジ掻きながら、少し戸惑った様子で口を開くのだ。


「そやな、例えば、リンが敵に捕らわれたとするやろ」
「うん?」
「ほいで、お前を逃がす代わりに こう要求されたとする」
「なんて?」


ブランチはドヤ顔で言う。


「ワシの鼻とリンの命を交換やってな」
「う、うん?」

訳が分からないが、とりあえず聞くとする。


「ほなら、ワシは躊躇せず、この立派は鼻をもいで敵に差し出すんや!」
「………うん?」
「首傾げてるとこ悪いんやけど、ここ感動するとこやで自分」
「えっ、嘘、どこらへんが?」


ブランチは驚き、目を丸くした。


「い、今ので分からへんのかい!」
「うん…?」
「なんでやねん!!ええか、お前のためなら、この鼻の一本や二本や三本、なあんも惜しくないいうことや!」
「鼻は一本しかないよ、というか、“本”っていう数え方がそもそもおか」
「聞けや!と・も・か・く!自分になにがあっても、ワシは捨て身でリンを守るくらい、そんくらいの気持ちっちゅうことや!」


息を切らすブランチに、私は問いかける。


「で? 私の事、好き?」
「分からへんやつやな…てか、そんな期待した目で見るなや」
「好き?」
「…好っきやねんで」
「よくできました」
「ホンマ腹立つわ〜」



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