みどりいろのくも

□みどりいろのくも E
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少しの沈黙が続いたらあと、


名無しさんは苦笑した。












「幼馴染みには、なんでもお見通しよね」




手嶋はその言葉に笑顔をみせる。



「やっぱりかー!だと思ったんだよ」




「えー、私ってそんなに分かりやすいのかな、恥ずかしいよ」



「大丈夫、大丈夫!」


名無しさんは顔を手でパタパタと扇ぐ仕草をみせた。


「でも、どうしよう、じゅんちゃん…… 」


「ん?」



「私、こんな気持ちになったの久しぶりで、どうしたらいいか分かんないや」


すると手嶋は自慢気に胸を叩いた。



「よし、それなら任せろ!」


「えっ」





「俺が協力するさ!」



「ほ、ホント!じゅんちゃんが協力してくれるなら、心強いよ」



「あぁ、どーんと任せてくれって!早速だけど、何か俺に出来る事とかある?」






手嶋のその言葉に 名無しさんはあるお願いをした。








□□□






その夜。




名無しさんは喉の渇きを潤すため、
食堂付近の自販機に水を買いに部屋をでた。



すると、






食堂の中に二人の影が見える。





「(あ、じゅんちゃんと、巻島さん……)」



咄嗟に自販機の影に隠れる 名無しさん。



中からは、小さな声で自分の名前が聞こえる。




「(……私の、話し?)」










瞬間、名無しさんは日中、手嶋にお願いしたことを思い出した。




日中、何か出来ることはないかと手嶋に言われた 名無しさんは、























《じゃぁ、巻島さんに聞いて欲しい事
があるの……》

《何?》


《遠回しに、私の事……その、……どう思ってるか聞いて欲しいな》



《オッケー、じゃぁ、軽く聞いてみて、あと連絡するよ》


《うん、お願いします》































名無しさんは、食堂に居る二人に見つからないよう少し影に隠れた。





「(ど、どうしよ……でも、ここから離れないと、答えが……出ちゃう、)」








自室へ戻ろうとするも、中々、足が動かない。













そんな事をしているうちに、中から
手嶋の声が細く響いてきた。















「……ぶっちゃけ、どうですか、 名無しさん…… 」







「(早く、ここを離れよう……早く)」




















瞬間、巻島のため息と
短い答えが返ってきた。






























「…………無理ッショ」


















どき。












心臓を何かで叩かれたような傷みが走る。




















名無しさんは頭が真っ白になった。







「(あれ、恋って、こんなに、呆気なかったっけ……)」









その時、
後ろから小野田くんに話しかけられた。










「あれ、 名無しさん さんも、飲み物買いに来たんですね」




奇遇ですねと、小野田は笑っている。








小野田が発した「 名無しさん 」という名前に食堂の中の二人は ぎょっとした。









「……あ」



名無しさんは、食堂の巻島と目があった。







いてもたってもいられなくなり、
名無しさんは、飲み物を買うはずの小銭を握りしめ、その場から走り去ろうとする。









それを見た巻島は、




「待つッショ!!」







そういい、あの時の渡り廊下で 名無しさんの腕を掴んだようにして引き留めた。







「待つッショ!これにはわけが!」




「……や、やめ」




巻島はハッとした。






名無しさんの目には大粒の涙が今にも溢れそうになっている。















「……ごめん」








巻島は 名無しさんの手を離した。



瞬間、


名無しさんは彼の手を初めて拒否したことに気づく。


「あ、ちが……私、…………ごめんなさ……」









名無しさんは涙を拭いながら、

食堂と、巻島の下をあとにした。













巻島は、 名無しさんに振り払われた右手を寂しそうに見つめていた。






















……

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