みどりいろのくも
□みどりいろのくもD
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空気が、重い。
名無しさんは巻島の下着を手に赤面していた。
「……えと、あのっ、これは、そのっ! 」
何か喋らなければと、 名無しさんは口を開いた。
「あのっ、み、緑のパンツが巻島さんで、パンツから緑の巻島さんがっ、洗濯機から出てっ、だから私っ、あの……あのっ!」
「と、とりあえず落ち着くッショ!」
恥ずかしすぎて、涙目になってきた。
「うっ、ごめんなさい……」
咄嗟に言葉が出てこず、 名無しさんは、赤面したままうつむいた。
「と、ところで巻島さん、何でここに?……」
巻島は、後ろ髪を掻きながら
「あぁ、実は食堂の皆が、 名無しさんを遅いの心配しててよォ 、様子みに来たッショ 」
「あ、すいません!量が多くてっ、その……」
名無しさんは両手にある下着から目を反らす。
「わ、分かってるッショ、だから、早く終わるように、……手伝いに来たっつーか……」
「え……」
名無しさんは目を丸くする。
「……だから、早く終わらせて、一緒にメシ……食おうぜ、 」
「……あ、ありがとう…ございます!」
巻島は、 名無しさんの手の中の下着を取り、洗濯ばさみに干していく。
名無しさんの その視線に気づいたのか、巻島は
「……?……ぼーっとしてねぇでほら、さっさと干すッショ、手伝うからよォ」
そう言われると、名無しさんは笑いながら
「……やっぱり巻島さんて、とっても優しいです」
その言葉に巻島は、
「クハッ、何ショそれ。だから怖いでいいッショ」
どき。
「(やっぱりこの笑顔……すごい好き……)」
名無しさんは、巻島と二人きり。
巻島の横顔と、少しの優しさに
静かに笑みを溢した。
瞬間、ふいに、二人の手が
かすれる程度に触れる。
「あ、悪りぃ……」
「い、いえっ 」
名無しさんは、自分の
頬が赤く染まってくのを感じた。
「(触れた所から、ドキドキ聞こえたらどうしよう……でも、もう少しこのままでいれたらな……なんて贅沢だよね)」
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合宿4日目。
3日目である昨日からは、去年のインターハイの王者、箱根学園の自転車競技部との合同練習会が始まっていた。
さすが、去年の王者というのが頷ける、部員全員が力強く、驚異的な速さだった。
また、水色のカチューシャをつけているクライマー、東堂と巻島は以前からのライバルで、 今までの勝敗は、7勝7負だとか。
今度、最後のインターハイで決着を着ける!と、お互い闘志を燃やしている。
この日も 名無しさんの目には
東堂の隣にいる巻島が写っていた。
名無しさんは巻島を無意識に目で追い、いつの間にか走るその姿に見とれていた。
すると、
「 ……名無しさん、 名無しさん! 」
自分を呼ぶ声にハッと我に返り、
声の方を振り返る。
「じゅ、じゅんちゃん!」
そこには、幼馴染みの手嶋の姿があった 。
「 名無しさん?大丈夫か、具合悪い? 」
巻島を目で追うばかり名無しさんは、手嶋の声にすぐに反応できなかったのだ。
そんな自分を恥ずかしく思い、 名無しさんは赤面し、慌てた。
「ううん、大丈夫!ご、ごめんねっ、 どうしたの、タオル?そ、それともドリンク?」
慌てる 名無しさんに手嶋は口を開いた。
「 名無しさんもしかしてさ、 」
「ん?」
「巻島さんのこと、好き?」
どき。
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