ヒロアカ短編

□天然≠安心
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「さて、そろそろ勉強でもするか」


賑やかな 寮が静まり返った頃。

自室で教科書を開いた時、控えめなドアのノック音がした。


…夜に……誰だ?


ドアを開けると、そこには 教科書と筆記用具を持った、



「名無しさん…?」


「轟くん、夜にごめんね」


「いや。どうした、教科書なんか持って」


名無しさんは 恥ずかしげに 目を伏せ、小声で呟いた。


「今日のマイク先生の英語の授業、ちょっと分からない所があって」


「…ああ」


「明日 朝一で小テストあるじゃない? 今日の授業でやった所の復習って言ってたから、どうしても 理解しておきたくて…」


ドアの前に立っていた 名無しさんを自然に 自室へ入れる。


確かに 今日の英語の授業は いつもより進むスピードが早く
明日 小テストと聞いて クラスの皆がブーイングしていた程だ。




でも…。




「なんで、俺なんだ?」



「えっ…」



正直 一番の謎だった。



「八百万の方が 俺より頭いいぞ」



「あ、ヤオモモは もう寝る時間だったみたいでっ…。あとの成績上位の人は皆 男子だし…、ちょっとね…」




俺は その“男子”に入ってねえってか…。



自分でも分からないが、なぜか胸がざわつき イラついた。



「すまねぇが、名無しさん」



名無しさんの持っていた教科書と筆記用具を取り上げ、壁に追いやった。



「と、轟くん、なにを」



「今後の為に忠告しとく」


「あっ、め、迷惑だったよね…、夜遅くにごめんなさい、時間帯考えるね…!」



「そうじゃねえ」



なんでこんなにイラついてんだ俺。
ワケ分かんねえ。


「夜。男の部屋に 気軽に入って こねぇ方がいい」



「え…」



「俺だって 他のやつらと一緒だ」




名無しさんの腕を掴む。
細せえ、こんな腕で。抵抗出来ねぇ状況になったらどうするつもりなんだ。




頭痛てえ。




「と、どろきくん、待って…」











「俺なら“安心”、なんて。思わねぇ事だな」





目を丸くしている名無しさんに
苛立ちをぶつけるように畳み掛ける。







「次は 多分。理性利かねえと思う」







…苛立ちの原因が今 分かった。







想像以上に 幼稚な自分の理性。
心底 腹がたつ。


*


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