弱虫ペダル 短編

□イタダキマス
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一人、部室の掃除をしていた時、隼人が来た。


「(パワーバーでも取りに来たのかな?)」



「お疲れ様」より先に出てしまった言葉は…。


「隼人、どうしたの、それ…?」


そう、隼人が 頭に付けているのは


「お、名無しさん、お疲れさん。これか? カチューシャだ」



当たり前のように言う彼は、いつものように自信満々な様子。


それは見て分かるけど…。


「…な、なんで猫耳?」


そう、隼人が頭に付けているのは、ただのカチューシャではなくピンク色の猫耳のカチューシャだ。



「ああ、ファンの子がこれ付けて走ってくれって」


福富くんや、荒北くんなら絶対しないファンサービスだけど、
隼人は ファンの子に 割りと何にでも応えちゃうからな…。


「まあでも、自転車はヘルメット付けないと走れないからな。一瞬だけ付けて バキュンポーズしてきた」


「お疲れ様、モテる人は大変よね」


その後 ピンクの猫耳カチューシャをファンに返そうとしたらしいけど、
「あげる」と言われてしまったみたいで
仕方なく 部室に置きに来たらしい。



「とりあえず、俺のロッカーにでも入れとくか……」



隼人は ロッカーを開けるが、少し考えたあと、



「名無しさん」

「ん?」

「これ、ちょっと付けてみないか」

「えっ!?」



そう言って 隼人は 猫耳カチューシャを私の頭に乗せようとする。



「え、ちょっと、やめてよ。あ、まさか この為に 部室に戻って来たんじゃないでしょうねっ、」

「俺としたことが。バレちまったか」

「バレちまったか、じゃないわよ」



そうして結局 無理やり乗せられたカチューシャ。
ムスっとした顔付きで彼を睨む。



「お。オメさん、いいな」


隼人は、ふむ、と急に真面目な顔をした。




「何が?」

「制服に猫耳。ムスッとした上目遣い。……シチュエーション的にそそるな」

「…隼人。部活中でしょ…!…ふざけてないでっ…」

「このまま シちまっても」

「ばか」

目をそらすと、隼人は 私の顎を軽く持ち上げ。


「じゃ、今度の休み。オメさんの部屋へ行く時は、これ付けて続きだな」


「……」


分かった、と言わないと 部活へ戻らなそうだったから、迷ったあとに「うん」と答えた。
顔が熱い。きっと、真っ赤になってるに違いない。




すると隼人は口角を上げながら ウェアのジッパーを下げた。




「やっぱり“今度”ってのは撤回だ」




「…隼人?」




半裸の隼人がジリジリと迫ってくる。









「“今”じゃないと嫌になっちまった」




「え、待って、今度って言っ……」




「イタダキマス」



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