弱虫ペダル 短編

□うそ、前言撤回。
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「(あァー。今日はホント最悪な日だった。何してもうまくいかネエ…。あー)」


部活終わりの夕方。
ち、と舌打ちをしながら校門をあとにすると、見たことのある後姿が目に入った。



「あれ、名無しさんチャンじゃなァイ」


と、声をかけると バス停の横に立っていた名無しさんはこちらを振り返る。



「あ、荒北くん。今帰り? というか なんか疲れてない?」


「あー うん。…つか バス」

「え?」



「バス、いつ来ンの」

「あ、さっき行っちゃったばかりだからあと15分後くらいかな」

「ふーん」

そういって路上にしゃがんだ荒北を不思議に思った名無しさんは


「あれ 荒北くん バスじゃないよね」

「ケドもう暗いし。女子一人置いて帰れないっしょ」


「…荒北くん」


「15分くらいなら一緒に待つし」


その言葉に、少し驚いた様子を見せたあと、名無しさんは優しく笑った。





「ありがとう 荒北くんは 優しいね」





どき。



「(…笑顔とか 反則)」



名無しさんは固まった荒北の顔を覗き込む。




「荒北くん?」


「最悪な日とか…前言撤回だろコレ」

「え?」

「いや、こっちの話」

「?」




最悪な日が こんな簡単に
良い日になってしまうなんて。






「(…つくづく俺も 都合のイイ奴)」


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