弱虫ペダル 短編
□さからえない
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何気ない 休日。
彼の部屋でまったり時間を過ごしていた名無しさんに、ふいに
「なァ、名無しさん 今日って安全日ィ?」
と、まるで「今日の夕飯なに」のような口調で聞いてきた。
「え、なに。いきなり」
少し驚いた表情で返すと、彼は
「いやァー なんつーか。久しぶりに思い切り雄になりてェなーなんて」
「ぷ、なにそれ。靖友なんていつも雄になってるようなものじゃない。オラオラーみたいな」
「は、そのオラオラーっつー俺の事が好きなのは誰だっつー話ヨ」
「…もう」
そう苦笑した名無しさんを引き寄せ、彼は優しいキスを落とした。
「…靖、友」
「名無しさん、」
「…ん?」
彼は名無しさんをきつく抱きしめた。
「雄んなってもいィ?なんか、すげェめちゃくちゃにしたい」
その言葉に、短く「うん」と返すと、彼は
「…やっぱやめた」
「…めちゃくちゃに、しないの?」
「…めちゃくちゃ、優しくする」
「ん」
彼はそう言うと、名無しさんに静かに覆い被さった。
きっと、
彼の優しさには、多分一生、さからえない。