弱虫ペダル 短編
□天然無敵
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激動のインターハイが幕を閉じ、
箱根学園は新たに
“新箱学”として
来年の夏に向け始動していた。
「なぁ、葦木場お前さ、」
この日、葦木場は部活終わりに
唐突に黒田に話しかけられた。
「ん、どぉしたの?ユキちゃん」
洗濯物を干しながら葦木場は
きょとん としている。
「 お前、名無しさん先輩の事好きだろ 」
「えっ!」
この頃、
新開と マネージャーである名無しさんが二人で居る姿よ良く見るが
新開の隣にいる 名無しさんの事を 葦木場は知らず知らずのうちに目で追っていたことに
黒田は気付いていた。
葦木場は、黒田の言葉に
「す、好き?っていうか、気になってただ目で追ってるだけだけど?」
「それを好きっていうんだよ!やっぱ天然だなお前!」
天然の二文字にムッとする葦木場
「むっ、俺は天然じゃないっ」
「そゆとこが天然なんだよ!天然の9割は自分で気付いてないって総務省の調査にあんだよ!」
「えっ……うそ!…………」
「ウソだよ」
「お、俺、……その頭数に入ってんのかな」ハラハラ
「だからウソだよ!なんの調査だよ!あー、なんか疲れてきた、話しそれたじゃんか」
てか、と黒田が続ける。
「好きなら、少し焦った方がいんじゃねーの」
「えっ、どーして?」
黒田はため息をついて
「お前さ、新開さんが 名無しさん先輩に1日何度もバキュンポーズやってんの気付いてねーのかよ 」
新開のアプローチといえば周りから見ても分かりやすく、
「必ず仕留める」という合図の
バキュンポーズの意味を知らない者は居なかった。
「え?、知ってるよ」
「だったらそれが、どゆ意味だかわかんだろ」
葦木場は、うーんと
考えたあと、
「んー、んー………………ん?」
と、ヘニャっとした笑顔で
黒田に答えを求めた。
「あー、もーだめだ。話通じねぇよ。塔一郎呼んどきゃよかったわ、本当、鈍感だよな」
「えっ、なんで?」
「新開さんのバキュンポーズは、必ず仕留めるって合図だぜ、 名無しさん先輩のこと狙ってんだっつーの 」
「……え!?そうなのっ!?」
「そうだよ、だから急いだ方が良いっつてんだ。新開さん爽やかな顔して鬼だからな、ぜってー逃がさないって顔してたし」
葦木場が洗濯物を抱え
おろおろする。
「どどど、どーしよ!!ユキちゃん!」
「そりゃお前、告るしかねぇだろ」
「こここっ!告っ!?」
葦木場が我を失っていると、
外から部室のドアがひらいた。
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