殺戮学園

□2-A
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「嘗め腐ってんな…コイツら」
神奈山辰夫(カナヤマ タツオ)は冷静だった。彼はどんなことにもあまり動じない性格で、目の前で喧嘩が勃発しても、殴られ出血しても、顔色一つ変えない。この状況に対しても同じだった。
神奈山は侵入者が硝子を突き破って入ってくるやいなや、侵入者の腹部に拳を入れた。一番窓側の席だったのが幸いした。強烈なボディーブローを喰らった侵入者は窓の外へ落ちたが、他の3人の侵入者は機関銃を構えた。が、しかし、彼らは予想していなかったのだ。このクラスには凶悪なワルがいることを。北村虎太朗(キタムラ コタロウ)と伊達孝蔵(ダテ コウゾウ)だ…。北村は自分に向けられた銃口に怯みもせず、侵入者の腹に一発、首に一発、そして足を払い機関銃を奪った。北村に銃口が向けられてからほんの3秒の間だった。伊達は侵入者の持っている機関銃を蹴りあげ、顔面に一発入れただけでKOさせた。残る一人はいつの間にやら神奈山の足に踏まれていた。このクラス、2-Aは、たった3人のお陰で一人も死傷者が出なかったのだ。
「伊達ちゃ〜ん、またまたパンチ一発ッスか〜凄いね〜、手大丈夫?」
「…その呼び方やめろ…」
「お…お陰で、助かったぜ…」
そう話しかけてきたのは同じく不良の金井勝(カナイ マサル)だった。
「マサちゃ〜ん、どうだ?惚れたか?」
「え…あぁ…まあ、な…」
「そうかそうか〜」
「お前ら、こんなときに何て会話だ!普通の状況じゃないだろ!」
そう言ったのは太田佳太(オオタ ケイタ)だ。
「コイツら、マシンガン持ってるんだぞ!絶対おかしいだろ!!…取り敢えず、警察に連絡して…」
「何言ってるのよケイちゃ〜ん、こんなもの偽物に決まってるでしょ〜が」
北村は機関銃を拾い上げて黒板に向かって撃った。
パパパパパパ
凄まじい衝撃が北村を襲った。その衝撃に耐えきれず北村は後方にすっ飛んだ。
「は…?本…物?!」
その一言でクラスは騒ぎ始めた。
「嘘…だろ…?何かのドッキリじゃねぇのかよ!!?」
「じゃ…じゃあ…北村達が止めてなかったら…俺達…」
「ハハハ…そんなわけないじゃない…私たちを騙そうとしてるんでしょ…?」
「うるせぇ!!!」
神奈山の一言でクラスは静まり返った。
「本物だろうと偽物だろうと、関係ない…ドッキリ?馬鹿げてる…俺達を襲った罪は…重い…」
「お…久しぶりにタッちゃんの本気が見れるぜ…」
「これからこんなことをした犯人を突き止めに行く、虎太朗、孝蔵、着いてこい」
「あいよ…」
「わかった…」
神奈山が二人を連れて廊下へ出ていこうとしたその時…目の前に血まみれの生徒が倒れ込んだ。
「な…!?」
「…コイツ…2-Bの奴だ…」
今まで気が付かなかった。廊下は血だらけで生徒の亡骸があちこちで横たわっている。先生の姿も見えた。
「な…何が起こってる!?」
このときばかりは神奈山も取り乱さずにはいられなかった。あちこちで聞こえる悲鳴、逃げ惑う生徒達、鳴り響く銃声。それは彼が不良として今まで見てきたものとはまるで違っていた。
「……無理だ…出ていくと…確実に………死ぬ…」
「おい…タッちゃん…?」
北村は神奈山の怯えている姿を初めて見た。
「…俺が…行ってみる…!」
伊達が廊下へ出ていった。
「待て!伊達!!」
北村が必死に呼んでもダメだった。
「と、取り敢えず…な、中に、入るか…こ、虎太朗…」
「ああ…」
神奈山と北村は教室へ入った。
と、その時、床でのびていた4人の侵入者がいきなり起き上がった!!
「き、貴様ら…」
神奈山は先程受けたショックでまだ戦闘できる状態ではなかった。
頼りの綱は北村ただ一人。
「こ、来いよ…!」
北村は戦闘体制を取った。
が、しかし…侵入者達は踵を返し窓に向かって走ったのだ!
「なっ…!?」
呆気にとられる2-A達を他所に、侵入者達は窓から飛び降りていった。
まるで、自害するように。

「…何故だ…これは…」
伊達が見たのは荒れ果てた2-B。生存者は…いなかった。廊下では銃声が絶え間なく鳴り響いている。
「……くそ…」
伊達は再び廊下へ出た。床は血で濡れていた。悲鳴が聞こえるということは、まだ生存者がいる!彼は廊下を走った。
男子トイレの前まで来たとき、
「おい、こっちだ!」
と囁くような声がした。伊達が恐る恐るトイレへ入ると、2-Bの六角蕨(ロッカク ワラビ)だった。野球部のエースだ。
「大丈夫か?…伊達君…だっけ?」
「ああ…心配はない…それより、ここにいても危ないぞ…」
「んなことはわかってるよ、だけど動いたら死ぬよ…」
「…でもここにいるよりいい…男子トイレで最期を迎えたいか…?」
「まだ、死にたくないさ…あ、2-Aは?」
「…まだ全員無事だ…」
「そうだね、伊達君も、神奈山君もいるしね…ボクも、2-Aが良かったな…」
「今さら言っても遅い…」
「でも…どこに行こうって言うんだ?」
「…まだ決めていない…」
「それじゃだめじゃないか!!」
「…すまない…」
「………あ、そうだ…野球部の部室に行こうよ!」
「…何故だ?」
「アイツらはマシンガンを持ってる、ボクらも、何か武器を持たないと…勝ち目ないよ…あそこなら、たくさんバットがある、それでも無いよりはましだよ」
「…そうだな…俺も使い慣れてるしな…」
「ハハハ…理由は聞かないでおくよ…」
「ところで…そりゃどこだ…?」
「校庭の隅…かな…」
「…チッ…遠いな…」
「ごめんね…」
「…仕方ねぇ行くしかねぇな…お前も来い…絶対に死ぬなよ…」
「え…あぁ!」
伊達と六角は校庭の隅の野球部部室へ向かうことになった。
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