殺戮学園

□1-A
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「はい…皆さん、夏期休業明けでね、授業もだるいと思いますが…頑張って、取り組んでいきましょうね」
夏休みが明けた。1-Aの生徒達は各々夏休みの間にやった宿題のワークやらプリントやらを係の生徒に提出している。
「あれ…?やってきたんだけどな…おかしいなハハハ…」
西原正也(サイバラ マサヤ)が宿題を忘れてきたようだ。
「お前なぁ〜…あれほど忘れるなよって電話で言ったはずだぞ?」
桐島大吾(キリシマ ダイゴ)は笑いながら科学のプリントを集めている。
「はいー!オレも忘れたー!!でも、科学だけなー」
藤田雄大(フジタ ユウダイ)も科学のプリントを忘れてしまったようだ。
成績も悪くなく、クラス内の雰囲気も良いこの1-A。西原、桐島、藤田の3人がこのクラスをまとめていた。
「みんなー科学オッケーかー?…よし、出してくるぞー?」
「はーい、オレ出してませ〜ん」
「雄大は持ってきてねぇだろっ!」
…明るいクラスだった。

「何だよ、夏休み明け一発目の授業オレじゃ不満かよ?ったく…しゃーねぇな…じゃ
、この時間全部潰しておめぇらの土産話聞かせろよ」
一時間目は保健だった。保健体育の関根先生、通称『関さん』が授業をしていた。体育の先生らしく体つきはたくましく、女子から人気があった。
「そーだな…じゃあ、いつもうるさい西原!何か話せ!」
「え!?お…オレっすか!?」
西原は授業中いつもうるさかった。
「そーっすね…あ、水族館行きましたー」
「……それだけかよ!!」
「あ…」
教室は笑いに包まれた。
授業が始まってから何分ほど経っただろうか…突如教室の硝子が割れ、″何か″が教室内に転がり込んだ。それとともに数人の女子が悲鳴をあげ、関根先生が割れた硝子に近寄った。
「何だよ…これ…」
そう言い終わるか終わらないかの瞬間、その″何か″から煙が吹き出した。
「げほっ…げほ…何だ!!誰のイタズラだ!!?」
イタズラではなかった。今度は複数の硝子が割れる音と、初めて…ではあるが誰もが聞いたことのあるあの音が響いた。
パパパパパパ…
機関銃だった。
「なっ…?」
4〜5人の人影から火花が散り、機関銃の音が響いている。生徒達は何が何だかわからなかったが一瞬の間の後、縦横無尽に逃げた。煙の中を。
「何してるんだ…?これ…おい…」
桐島は何も見えないなか手探りで机を倒し、銃弾を避けている。
「何だ…?何でだ…?おかしいだろ…映画かよ…」
鳴り響く銃声。生徒達の叫び声。直感で思った、あ、これは死ぬと。
「うおらぁぁぁああああ!!!」
聞こえたのは高校生ではない野太い声、関根先生だった。彼は、その鍛え上げた肉体で侵入してきた一人に体当たりを食らわせそのまま窓の外へ落ちた。しかし、そんなことはこの煙の中、誰も見ていなかったに違いない。ただ、彼のその行動は生徒達に勇気を与えた。数人の男子生徒が雄叫びという名の断末魔をあげ、力の限りに体当たりをし、窓の外へ消えていった。煙の立ち込める教室の中に残ったのは、十何人かの亡骸と、生き残った9人だけだった。

「く…」
ほんの数分の間だったがそれ以上に長く感じられた。桐島が恐る恐る机の影から顔を出す…。
「あぁ…!!あああぁぁぁああぁ!!」
そこにはかつて友情を分かち合ったクラスメイトの亡骸。字の通り…血の海…。そこにはもう、仲間と築いてきた友情と絆の詰まった1-Aの姿はなかった。
「きゃあああああああ!!」
女の子の声がした。桐島は立ち上がって周りを見渡す。いた。吉川七子(ヨシカワ ナナコ)だ。彼女は半狂乱で叫び続けていた。
「吉川!!大丈夫か!!」
「ああああ…ハァ…ハァ…」
誰だってこうなるだろう。ほんの数分前まで一緒に授業を受けていた″仲間″が…無惨な姿で床に横たわっているのだから。
「吉川…!オレだ!!大吾だ!!」
桐島は呼び掛けた。吉川には反応がない。
「大吾!!大丈夫…か!?」
背後から泣きながら聞こえたのは長瀬友輝(ナガセ トモキ)の声だった。
「大吾!これは…一体…なんなんだよぉ…!!」
「友輝、オレにもさっぱりだ…何で…こんな…」
「良かったな…死ななくてよ」
「明彦…」
林田明彦(ハヤシダ アキヒコ)、このクラスでは浮いた存在であまり交流がなかったためにやけに冷静であった。
「見てみろ、オレらだけじゃない」
林田の指すほうを見ると大野由歌(オオノ ユカ)、沖田梨理(オキタ リリ)、岸部京史郎(キシベ キョウシロウ)の姿。
「お前ら…無事だったか…ハァ…」
「おい…ここにもいるぞー!」
少し落ち着いた様子の長瀬が言った。そこには平井叶(ヒライ カナ)、藤田もいた。
「雄大!!」
「大吾ぉ!!叶は気を失ってるだけだ…死んでない…!!」
「そうか…何より……」
桐島は違和感に気づいた。
足りないな…。いつもいるのに、いない。アイツが…。
「西原!!!」
そうだ、いないんだ。西原が。誰よりも仲間思いのアイツが死ぬはずがないんだ。おかしい。絶対におかしい。桐島はフラフラと窓に近寄る。
「…んなはず…」
桐島は窓の外を覗いた。
「ハハハ…寝てやがるよぉ…」
いたのだ。そこには。あの煙の中、突如聞こえた関さんの叫び声。その後…コイツ…。
そう、あのとき聞こえた男子生徒の雄叫びの中に、西原正也のも混じっていたのだ。
「ハハハハハ…起きろよぉ!西原ぁあ!!」
五階から桐島は呼んだ。駐車場で侵入者と寝ている西原を。
「大吾…」
1-Aは、関根先生と西原正也含める数人の勇敢な男子生徒の活躍で全滅を免れた。
1-A…残り9人。
 

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